図書館には本が詰まった書架がずらりと並んでいるというイメージですが、それは物理的に見えるものがそうなのであって、見えない書架に見えない情報も詰まっていて、それもまた大事な図書館のデジタルのコレクションです。どちらの情報も案内や使い方や付き合い方は情報活用として学ぶ必要があります(1)。一人一台端末の時代を迎えて、ようやくデジタルの情報が扱いやすくなってきました。
1)電子書籍
学校単独や自治体で入れ始めている電子書籍ですが、契約によって一度に数名またはクラス全員が読めるような設定もあります(2)ので、同じ本を必要とする授業での活用には威力を発揮します。読み上げ機能付きは読むことが困難な子どもや英語多読時の役に立ちます。
地元の公共図書館が電子書籍を入れていれば、学校の端末で読める設定にしてあげ、学校での活用に結び付けましょう。自治体によっては「デジとしょ信州(3)」のように、広域での電子図書館を作って共同購入、共同提供をしているところもあります。
2)オンラインデータベース
2009年に北米視察に行ったとき、ほとんどの中学校高等学校ではオンラインデータベース代が資料費の半分を占めると言い、ある小学校では次の改訂のワールドブック(百科事典)はもう冊子体では買わないと言っていました。日本ではその後2回も冊子体の子ども用百科事典が改訂されていますが、かなり遅れて少しずつ学校や公共図書館にもデータベースとして入るようになってきました(4)。新聞は冊子体の縮刷版では場所を取りますが、1学級同時アクセスができる新聞のデータベースはスペース的にも助かります。
しかし、日々の紙の新聞は家庭で見ることも少ないようです。学校では「新聞にまとめてみよう」という活動もあり、できれば比較ができる2紙は最低必要です。2023年、東京都の葛飾区では各校購入から各校の希望を聞いた区が一括契約・支払いをするという仕組みに変えて注目されています(5)。
3)デジタルアーカイブ――子どもたちの作品も
地元のものから世界のものまで、インターネットを通じて美術館や博物館などの所蔵作品がインターネットで見られるようになっています。人びとのさまざまな営みから生まれた情報資源をデジタルデータとして記録、保存して、活用していこうというのが「デジタルアーカイブ」です(6)。どこにどんなデータがあるのか、ひとつひとつの館を検索するのは大変ですが、まとめて探してくれる仕組みもあります(7)。
実はそのような案内のためのリンク集やポータルサイト、そもそもデジタルアーカイブ自体も図書館の仕事です。東京学芸大学附属図書館には「東京学芸大学教育コンテンツアーカイブ(8)」があって、その中から試験的に学習指導要領コードを付与した学習教材も探せるようになっています。各都道府県立図書館や地元自治体の図書館のウェブサイトもぜひ見てみましょう。県立長野図書館には「信州ナレッジスクエア(9)」というポータルサイトがあり、そのなかの「eReading Books(10)」に「わたしたちの松川村」ほか、これまでなら探究的な学習や社会科の副読本として冊子でだしていたであろう情報をネット上に公開しています。何人でも同時閲覧ができ、県外からのアクセスも可能になりました。
探究的な学習でまとめた子どもたちの作品や校内記録も校内公開(11)、または公共図書館と協働してブラッシュアップして地元公開などしていくこや、多すぎる情報からその学校に必要な情報だけに絞って紹介することも、学校図書館の仕事です。
4)デジタルもアナログもどちらもつかえるように
図書館・学校図書館は本について推薦ブックリストをこれまで作ってきたように、デジタル情報についてもおすすめを作っていく時代になりました。リンク集やパスファインダー(12)はありましたが、後者には最近QRコードがつくようになりました。デジタル資源カードというものを作って、見えない情報を書架に入れて紹介する試みも始まっています。(13)
『ネット情報におぼれない学び方』(岩波ジュニア新書,岩波書店,2023年)の著者・梅澤貴典さんはその本で、「ネットで何でも分かる」というのは思い込みであって、「確かな情報」にたどりついて自分の知識体系をつくり上げ、アウトプットしようよと子どもたちの背中を押しています。