Vol.180教育者のための創造的マインドを拓く―異才発掘プロジェクトROCKETを通して―②
教科書から学ばない学び、非常識を受け入れる学び

 異才発掘プロジェクトROCKETの子ども達は、学校の規律や時間割などのきまりに則って行動できないと訴えます。そんな彼らに対して、毎年ROCKETでは「解剖して食す」というプログラムを行っています。2016年度の「解剖して食す」では、エビ・カニという硬い殻で覆われた甲殻類を用意しました。

2016年度「解剖して食す」の食材

 教科書なし、時間制限なしの中、ミッションは食材を捌いて食べるということのみです。用意された甲殻類は見たことのない種類ばかりで、捌き方の検討がつかない。そんな甲殻類を前に彼らがとった行動は、一斉にiPadを開いて捌き方を調べるというものでした。学校や教科書を嫌う子ども達が答えを探そうとして自己矛盾に陥る。人と異なる道を選ぶなら答えを安易に探すのではなく、自ら導き出した答えに納得していくプロセスを経ることが重要です。自分のやり方を見つけていくことは、答えのない人生の歩き方にも通じます。だからこそ、ROCKETは敢えて教科書なしのカオスで試行錯誤の場を子ども達にぶつけるのです。
 バーチャルネイティブ世代の子ども達に与えられた次なるミッションは「デジタル飯」を作れというもの。これは2.5cm角の食材を縦3、横3に並べて27個のキューブ型に積み上げて作る画期的な料理です。

ゲーム感覚で作るデジタル飯

調理方法も耐熱容器に入れて電子レンジで3分間チンするだけ。ゲームのマインクラフトにハマっている子ども達はバーチャルの中でキューブを積み上げる技術を磨いています。さぞうまく作るのだろうと期待を膨らませました。
 いざ組み合わせ始めると、色合いを気にする子や栄養価のバランスをとる子など、それぞれの視点から様々なものを作り上げていく。そんな中、あまりにも非常識な組み合わせで満足そうな顔をする少年が一人。彼が選んだ組み合わせは、ベーコン、牛肉、チーズ、チョコレートの4種類。好きなものだけを選んだようですが、一般的に考えると非常識な組み合わせです。電子レンジから取り出した後の惨事を考えると、より実行に移さない方が賢明です。けれどROCKETはあえて非常識を受け入れます。人が選ばない先にイノベーションがあるかもしれないからです。それを恐れず進んでいける場所はユニークな子ども達や閉塞感のある世の中には必要なのです。立ち止まって冷静に考えることも大事なことですが、それ以上にユニークさを生かす学びの場には非常識が時に求められます。そして彼が作ったデジ飯も期待を裏切って美味しかったのです。

東京大学 先端科学技術研究センター
人間支援工学分野 特任助教
福本理恵
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