「『著作権』という言葉を知っていますか?」と聞くと、子ども・大人ともにほぼ全員が「聞いたことがある」と答えます。しかし、具体的な内容を知らなかったり、「学校は何でもあり」と誤解していたりします。そもそも、疑問にすら思わない人も多いのではないでしょうか。特に学校に関する著作権は、原則からもう一歩踏み込む必要があったり、ICT活用に伴った法改正があったりして、複雑に見えます。
音楽科教員である私が、学校での著作権についての話を自治体や学校で始めてから数年経ちますが、私ほど相応しい人はいないと自負しています。それは“音楽”という著作物を使ったり作ったりしてきたことに他なりません。幼少期からのピアノ、合唱・独唱、吹奏楽、オーケストラ、そしてジャズに和太鼓。何千、何万という音楽に触れてきたのにも関わらず、大学を卒業するまで著作権を考えたことすらありませんでした。現在、著作権教育の重要性を語っているのは、私を形成した音楽への感謝と贖罪でもあるのです。
「著作物」とは言語、音楽、舞踊、美術、建築、地図、映画、写真、プログラムなどです。校内を見渡すと、黒板に文章を書いたり、絵や書写の作品を掲示したり、音楽を演奏したり、レポートやスライドを作ったりと、子どもも教員も、紙でもデジタルでも、著作物を作ったり、使ったりしています。GIGAスクール構想による端末の導入で、著作物の作り方・使い方が大幅に変わったことは言うまでもありません。2024年度に私が指導した中学校では、ワークシートや資料、提出物をGoogleクラスルームでやり取りをして、紙は教科書だけでした。
著作権法は約200条あり、「作品は作った人のもの」と書かれています。作った人の物だから、使う時・増やす時・変える時に作った人に許可を取る。これが原則です。作った瞬間に、作った人に権利が発生します。 学校で使う著作物について、作った人に連絡をして許可を取ったことはありますか。『大造じいさんとガン』を読んだり、黒板に文章を書いたりします。また、『赤とんぼ』を聴かせたり、歌ったりしますが出版社に許可を取りません。それは取る必要がないと、これも著作権法に書いてあるからです。
次回は学校での著作権について、紙とデジタル両方の視点から触れます。