Vol.191新しい病原ウイルスと共生するための健康教育①
感染症とその予防

 2020年7月1日現在、新型コロナウィルス感染症者は累計で1,000万人を超え、世界中で未だこの感染症対策は先が見えない状況が続いています。有史以来、天然痘、ペスト、結核、スペイン風邪など、感染症は人類に脅威をもたらしてきました。しかしいずれの時代も人間の知恵と勇気によって、私たち人類は感染症を乗り越えてきたといえます。
 そこで今日は、感染症とその予防の基礎基本について概説します。

1)感染症の基本
 感染とは、ウィルスや細菌、真菌等の微生物が人など(宿主)の体のなかに入り、臓器や組織で発育したり増殖したりすることをいいます。感染には、症状が現れる場合(顕性感染)と、はっきりとした症状が現れない場合(不顕性感染)があります。不顕性感染者が問題となるのは、自分が感染していることを知らずに、感染源として感染を拡げる可能性があるためです。また、病原体が体内に侵入してから発症するまでの期間を潜伏期間、感染によって症状が現れた状態、病気の起きた状態を感染症といいます。
 感染症が発生する要因は、原因となる病原体、病原体が宿主に入り込む感染経路、感染の受け安さである宿主の感受性の3つです。主な感染経路は、接触感染、経口感染、飛沫感染、空気感染(飛沫核感染)などであり、感染症の収束には、感染経路を経つことが重要となります。

2)感染症の予防
 感染症対策として重要なことは、感染症の予防と、発生後に拡大を防ぐことです。
 感染症の予防には、発生要因である感染源、感染経路、感受性者(病原体の侵入を受ける人)への対策、時期として感染前、発生時、流行時の対策、さらには個々の感染症の特徴に応じた対策が必要となります。
 社会が行う感染源や感染経路への対策には、環境衛生活動や検疫などがあります、個人が行う感染源対策には、食品の衛生管理など、感染経路への対策には、石鹸での手洗い、マスクの着用、うがい、換気などがあります。さらに感受性者対策として、予防接種や、十分な睡眠やバランスのよい栄養等の基本的生活習慣が重要となります。なお感染症が疑われた場合には、健康観察を十分に行うとともに、速やかに受診することが必要です。
 さらに、感染症予防対策としては、米国疾病管理予防センター(CDC)から出された院内感染のガイドラインである標準予防策(Standard precaution)が参考になります。この標準予防策に従うと学校では、手洗いや手指の消毒などの手指衛生を基本とし、消毒や清掃など学校環境衛生の維持管理を行う必要があります。咳エチケットとしては、咳やくしゃみがあるときにはマスクなどを用いて鼻や口を覆うことが大切です。
 こうした感染症予防策としての管理の徹底とともに、児童生徒に対しては健康観察の必要性や方法などを教え健康教育を行う機会とすることが望まれます。
 感染症の理解と対応のため、文部科学省の「学校における感染予防のための手引き」、厚生労働省の「保育所における感染症対策ガイドライン」「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」「予防接種法」を参照してください。

東京学芸大学 教授
竹鼻 ゆかり
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