Vol.117運動部活動のあり方を考える①
日本の運動部活動が変わる!

2018.07

「明日の部活はOFF(休み)にします。」
 「やったー!」

 このやりとりは、私がかつて実際に経験したことです。同じような経験をされている先生方も多いかもしれません。本来、部活動とは「生徒の自主的、自発的な参加により行われる」、すなわち、生徒自身が「好き」で「やりたい」と思っているはずなのです。しかし、この生徒は休みになるということに喜びを表現しました。これは、私にとって大きなショックを受けた出来事でありました。

 さて、2018年3月に「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」(以下、ガイドライン)が策定されました。ここでは、学期中は週2日以上の休養日や、ある程度のオフシーズンを設けること、1日の活動時間は、学期中は2時間程度、週休日等は3時間程度とすること等が原則として示されました。しかし、同様の指針は実はこれまでも1997年に文部省(当時)の「運動部活動の在り方に関する調査研究報告書」(以下、報告書)や、2017年に文部科学省とスポーツ庁の「平成28年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果の取扱い及び活用について(通知)」(以下、通知)において提示されています。私は平成17年度に採用されましたので、1997年の報告書が出されたときのことは分かりませんが、後者の通知が出された当時は、同じ部活動の顧問間で、休みをどのように設定するか等が話題になったことを覚えています。ところが、実際には多くの学校において、例えば区市町村の教育委員会からの公的な通知や指示があったわけではなく、これまで通りの活動が続けられてきたというのが実態で、私も例外ではありませんでした。

 こうした経緯があったので、今回のガイドラインについても、指針が示されるという噂が流れている段階では、努力目標程度で良いもので、結局これまでと大きな変化はないだろうというのが私の認識でした。ところが、東京都においては、2018年4月に「東京都教育委員会運動部活動の在り方に関する方針」が示され、私の所属する中野区においては、それに基づき、中野区における「部活動ガイドライン(仮称)」が策定されることが示されました。いよいよ、国を挙げて日本の運動部活動の抜本的な改革に本腰を上げたということです。

 私は、こうした指針が強制力・拘束力をもって示されたことは、運動部活動の未来、ひいては日本のスポーツの未来、そして教員の働き方改革という点において大きな意味があると思っています。

 現状維持を壊し、新たなものを創出していくためにはいくつもの壁を乗り越えなければなりません。次回は、現場の視点から、このガイドラインが示された背景を読み取り、懸念されること、期待することを述べたいと思います。

東京都中野区立緑野中学校主幹教諭
土屋太志
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