Vol.190「宿題」を通した学び③
これからの宿題

2020.07

 私は教科や単元によって「反転授業」を行うことがあります。反転授業とは、授業時間外にデジタル教材等による知識習得を済ませておき、教室では知識確認や問題解決学習を行うという、従来の授業と宿題の役割を「反転」させた授業形態のことを指します。この授業形態の利点は、宿題と授業が繋がっていることで、宿題によって身につけた知識をもとに授業を行うことができる点です。本来ならば、反転授業はカーン・アカデミー(Khan Academy)の取り組みに代表されるように、ICT機器を用い、事前にビデオ講義などで知識を得るのですが、実際には必ずしも各家庭にICT機器があるとは限りません。また、個々の実態を鑑みると一人での学習が困難な子もいるため、ICT機器を使わずに、教科書を用いることや、実態に合わせたワークシートを作ることで代替しています。

 反転授業の場合、知識習得は事前に済ませていることが前提のため、授業開始と同時に授業のねらいに迫ったり、考えを伝え合ったりすることができるので時間を有効に使うことができ、学びが深まることに貢献します。欠点は、前述のようにICT機器がない家庭もあることや個々の能力に差があることから、宿題を通してどこまで知識を習得できるかにばらつきがあることです。この欠点を解決する必要はあるものの、このような学びの拡がりを視野に入れた宿題のスタイルは、「知識→思考・判断・表現」というサイクルを確立し、子どもたちの学びに大きく寄与する可能性があります。

 異なる視点として、これからの学校教育では、【課題の設定】→【情報の収集】→【整理・分析】→【まとめ・表現】 というような問題解決的な学習活動である「探究的な学習」が発展的かつスパイラルしながら繰り返されていく重要性も言われています。NPO法人学習創造フォーラム(FiLC)では、児童生徒の探究学習を支援するために「自分で学ぶ、探究の世界」というページを公開しました。これは、子ども主体の探究学習を支援するべく、どのようなテーマの探究に取り組むか(「課題のヒント」)、学習成果としての「ポートフォリオの作り方」についてサポートするような内容になっています。このような角度をヒントに宿題を発展的に捉えてみることも示唆的だと感じています。

 最後に、決して「知識の定着」をねらう宿題を否定しているわけではありません。しかし、子どもたちが主体的になれないままに課題に取り組み、丸つけをしてもらう従来のスタイルはもう古いのかもしれません。自ら宿題に取り組む子どもの姿を意識することで、宿題を通して知識のみを学ぶのではなく、どのように学ぶのか、そしてどのように学びが拡がっていくのか、という学びの道すじをアップデートしていくことができるのかもしれません。

北区立赤羽台西小学校
主幹教諭 藤倉基裕
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