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Vol.035リアルな体験が子どもを成長させる①自分の成長を振り返ると見える「リアルな体験活動」の重要性

 4月の特集は「リアルな体験が子どもを成長させる」です。文科省が進める『青少年体験活動奨励制度』。今年度から、制度の枠組みが広がり、あらたに小・中学生も対象として、体験活動を奨励する制度に生まれ変わります。
 今月は、制度の解説を中心に、体験活動をテーマにした特集をお送りします。

1.自分の成長を振り返ると見える「リアルな体験活動」の重要性

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 なぜ自分はこんなことが得意になったんだろうと考えてみる。筆者の家は、世の中とは少しずれて、長いこと薪で風呂を沸かしていた。この事象の前後左右で多くの体験をしてきた。長い枝は罐(かま/ボイラー)に入らない。折るか、切るか、何とかしなければならない。物置の前の段差を使って斜めに枝をセットする、踏む(蹴り下げる)、折れる。この一連の動きの中に、大げさに言えば、挑戦と失敗と工夫が交じっている。もちろん、スタートは、父が見本として、できる大人としてやっているのを傍で見ていた。その後、兄とともに任されるのである。まだこの段階でもきっと、弟は手伝い程度であっただろう。どの太さ、木の渇きぐあいを観察し、自分の足で折ることができるのかを体得していく。思い切り蹴り下ろし、枝に跳ね返されたときの足の痛みは半端な痛みではない。グッと声と涙を潜めて痛みが引くのを待つのだ。必ず2つにしてやると道具を持ち出す。鋸をどの程度入れれば、折れるのか(その際も、父親の良い鋸ではなく、錆付いたおさがりの鋸を使う)。

<今は鋸づかいもイベントの一つ>
 このような活動の背景には、その後、火力を上げるために燃えやすいようにした薪を罐に入れる必要があるからである。道具としては、鋸はかなり早かった記憶があるが、なかなか使わせてもらえなかったのが、鉈(ナタ)である。これを使っている父はカッコよかった。切り株台の上に、斜めに刺さっている鉈は、子どもとして、たまらなくカッコよかったのを記憶している。一切使わせてもらえなかったものが卓上丸鋸である。キーンと音を立てて回る丸鋸で木材を切断する父の姿を少し遠くで見ていた。
 ここでの体験が、できなことにチャレンジし、失敗しても、工夫して再チャレンジし、達成するといった好循環の感得があったのだと思う。もちろん、上記は一例である。体験と一言でいうが、目標に向かうチャレンジ力・へこたれない力を培うには、幾度も失敗とチャレンジと成功の好循環が効いているのだと思う。
東京学芸大学教授
鉃矢悦朗
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