前回述べたような「教師」を取り巻く課題が多くなってきている現状を受けて、日本では教員養成の在り方自体を変革していくためのけん引役として、フラッグシップ大学を選びました。東京学芸大学もフラッグシップ大学の1つに選ばれていますが、どのような新しい時代に対応した「教師」を育てていくかの仕組みについては、その大学に任されています。東京学芸大学では、従来の教え方に関わる授業などにおいて、新しい教員養成の学びを取り入れようとしています。
また、内閣府が主催する総合科学技術・イノベーション会議においては、「教師」がこどもたちに関わるスタンスについて、これまで先生側から一方的に教授するスタンスの多かった”Teaching“を、もっとこどもが主体的に学べるように伴走する”Coaching”に切り替えていくことを推奨しています。すなわち、高校入試や大学入試に含まれる知識を先生の方から児童や生徒に伝達する学び中心ではなく、生徒が学びに興味をもつような状況を察知し、それを後押ししていく学び中心に変えていくことが望まれています。
以上のような試みは大変素晴らしいことであり、どんどん進めて行くことが良いと思いますが、「教師」が学校において、児童や生徒と大きく関わる時間は授業であり、その授業はほとんどが教科で構成されています。すなわち、日本も海外も同じですが、学校でこどもが学ぶ時には、学ぶ内容と時間を小分けにして、教科などに落とし込んで授業をしているのが現状です。このような現状を踏まえ、さらに教員養成の学びを良くしていくためには、前回、私が述べたような専門的な教科の内容(専攻した学問分野の内容)を学び、それとは別に教え方や学び方について学ぶ授業の仕組みにメスを入れる必要があります。
今でも高校生がなりたい職業の上位に「教師」があります。このような「教師」になりたいと思っている方に、教科や教育に関わる本質(学問)をどうやって捉えるかを授業で考えさせてくれて、それを児童や生徒にどうやって理解させ、面白くさせるか(学び方)について考えさせてくれるような教員養成を目指していく必要があります。是非、そのために既に「教師」として働いている方、また現在「教師」になるために学んでいる方から、よりよい「教師」を育てていく教員養成について、もっと意見や声を挙げてもらえることを期待しています。