○多様な生徒が通う公立中学校
学力、学習意欲、趣味嗜好、家庭の経済力……。公立中学校は、実に多様な生徒が通っているところです。そして、その多様な生徒を年齢という1つのものさしで区切り、40人ごとに学級をつくり、1日5~6時間の授業を受けさせている場所です。そこでは、学力が中程度の生徒に合わせた授業が行われ、全員一律の課題に取り組み宿題が課される、というのがまだまだ現状としてあるように思います。
本来、多様性は希求すべきものであり、組織にとってはプラスとなるもののはずです。しかし、上に書いたような現在の公立中学校の授業を見るとどうでしょうか。授業において多様性は、先生方を困らせる種となり、「落ちこぼれ」や「吹きこぼれ」を生む原因となってしまっているように思います。
○『学び合い』
『学び合い』は上越教育大学教職大学院の西川純先生によって考案された、学習形態及び考え方です。一般的に使われる学び合いと区別するために、西川先生が考案された学び合いには『』を付けて『学び合い』と表現されます。『学び合い』は、3つの「観」(学校観、子ども観、授業観)を基本にしています。授業観では、授業における教師の仕事は目標の設定、評価、環境の整備で、教授は子どもに任せるべきとされています。現在、授業で多くの教師が大部分の時間をかけて行っている教授を、子どもたちに委ねるという点で、一般的な授業とは大きく異なります。この授業の良い点は、自分が理解できるまでじっくりと取り組むことができ、早く理解した子はまだ理解できていない仲間に教えることで、自分自身の理解もさらに深まり、学級の人間関係も良くなるという点にあります。
○『学び合い』の考え方を取り入れた授業
公立中学校の生徒の多様性を存分に活かすため、『学び合い』の考え方を取り入れた授業を行ってきました。中学1年から3年間、理科の授業を受けた生徒の感想の一部を以下に紹介します。