教育困難校が抱えている問題や状況は様々あると思います。今回プロジェクトが研究対象として取り組んでいる学校の状況改善では、①学力の多層化への対応、②統廃合後の組織体制の確立、が初年度の主な焦点でした。学力の多層化というのは、端的に言うと学習の習熟度がバラバラになっているため、一つの授業で対象とする学習内容が生徒全体に伝わることが難しくなっているということです。教室の状況としては、一人の先生が、多発的に生じる状況に対応できなくなってしまうという状態です。
このような状況に対しては、個別に放課後補習などを行ないながら状況改善を図る必要がありますが、そのためには教員の時間や、人的サポートが必要になってきます。併せて、統廃合による各教員のすり合わせを行なうとなると、非常に大変で複雑な現場状況となります。
プロジェクトとしては、このような学校状況に対し、「授業秩序の回復」を目標に、現場教員の方々と連携して、現場の授業に教員養成課程の学生にTT、あるいは支援人材として関わってもらいながら正課授業と放課後の両方で活動を展開しています。
学校の教育環境を支援するにあたり、はじめに課題となったことは、「学生がどのような形で教育現場に貢献できるか」でした。そのためには、生徒の実態把握を効率的に共有するためのシステム(コミュニケーションツール)を作り、日常的に現場に関わることのできない学生達でもスムーズ、かつ効果的な授業サポートができるようにする必要がありました。
どのような形で現場教員の方々と連携をはじめたかというと、具体的には、図の様なABCDのタイプに生徒を位置づけて、それに応じて対応していくというものです。
これは縦軸に学習習熟度、横軸が学習意欲になっており、Aは学習習熟度/学習意欲ともに十分、Bは学習習熟度が低いですが意欲はある、CはBと反対に学習習熟度が高いが意欲は低い、Dはどちらも低いという分類になります。
理想的な学級状況としては、AとBの生徒で構成されている形ですが、困難校の現状としてはそれぞれの枠にある一定数の生徒がいて、その生徒全体に向けて授業を実施しなければなりません。これは1人の教員では相当難しいことです。
学級のいわば「教育環境」をこのように分類して捉えやすくすることにより、現場教員と学生とのコミュニケーションの枠組みが生まれ、授業内での効果的な連携が可能となりました。
最終的にはCDゾーンにいる生徒をABゾーンに移していくのが目標です。学習意欲をどのように伸ばしていくのが課題となります。特に、CとDの相性が良く、この2グループが結びついてしまうと授業運営が難しくなります。なので、ここのケアにまず学生が関わるようにしていきます。そして、最も重要なのがBの生徒達へのケアです。ある意味CとDの生徒達は目立つので、指導しやすいのですが、Bの生徒達は比較的目立たない位置づけにあるので、限られた時間の中での関わりでは指導の目が行き届きません。その点で、日常的な関わりから見えてくる生徒の位置づけについて現場教員との共有を行い、学習意欲を習熟度へ繋げるためのサポートをしていくことが大切です。
また、これに加え放課後の活動としてOFFSCHOOL(オフスクール)の活動を行い、生徒たちとの授業外での活動を行なっています。まだ活動が継続中ではありますが、だんだんと学校の雰囲気が変わってきました。
今後は、より多くの生徒の意欲を見つけながら、地域との連携を強めていき、学校を地域が支える多様な関係を構築していきたいと思っています。