私たちが考えようとしている先端的教育とは、ICTやデジタル教材を活用した教育です。悪条件とは、そうした教育を実現するためのお金も人も設備もないような状況です。そのような状況に置かれていたら、まずICTなどが教育の本質のどこを担うのかを、しっかり見究めましょう。そうすると、それはICTを使わないとできないのか、という問いが次に生まれてくると思います。
前回述べたICTやデジタル教材の役割①は、子どもに学ぶことのおもしろさを感じさせ、興味を喚起して主体的な学びを促すことでした。しかし、たとえば小学校の低学年の子どもに昆虫のことを教えようとするときは、実際に触ってみる、ガサゴソ動く感触を知る、飼育してみて餌の食べ方を見る、などの具体的な体験の方が、デジタル教材より有効でしょう。もし自然が豊かな地域であるのなら、デジタルではもったいない!
役割②の多様な知識・情報の収集も、多くの学校図書館に備えられている紙の百科事典等で解決できるはずです。オンライン百科事典は、その特性から現代の最新の事柄を調べるのには適していますが、一般的事項であれば、従来の百科事典や本が十分役立ちます。ここで重要なのは、どのような情報が必要なのかを考えることです。また、現在はまだネット上の無料の情報には、必ずしも信頼できないものが含まれていることを知っておく必要もあります。
役割③の多様なニーズへの対応の中で、特別支援については、ICTを活用したほうが効果的な場合も増えてきています。ただし、です。たとえば前回も触れた「ディスレクシア」とは何でしょう?私たちはICTを活用する前に、それを正確に知らなければなりません。優れた書籍がいくつか出ていますが、そこには機器を使わないでも可能なことが書かれています。
役割④の子どもたちの活発な意見交流は、考えてみると従来の学校でも行われていたことではないでしょうか。しかし地方小規模校であれば、全校児童・生徒の数が限られていて、多様な考え方に触れることができないということもあるでしょう。もし学校にネットにつなげて授業ができるパソコンが一台でもあれば、教師か学校司書が主導して対話相手を探し、スカイプ等で話し合うこともできます。
ICTやデジタル教材の活用は、これからどんどん必要になってくるでしょう。しかし教育の本質と役割を見究めることで、まだまだ様々な工夫が可能です。私たちは役割①はともかく、役割②〜④は学校図書館をうまく使うことで、多くの投資をせずに、様々なことが解決できると考えています。