1、2年生の子どもたちの中には、休み時間が終わると必ずと言って良いほど真っ赤な顔をし、顔中を文句いっぱいにして帰ってくる子がいます。たいがい、ほかにもう一人同じ顔をしている子がいます。一人は猛然と私のところにきて訴えをまくし立てます。サッカーをして遊んでいたけれど、ルールを守らず強引に得点をしたということで、たいそうご立腹の様子。そのいきさつの断片を次から次に繰り出すのですが、話が見えてこないんですね。こういうときに私はいつも、まずその子の怒りを引き受け、その爆発する感情の芯となっているところを探ります。その芯に子どもは割と気づいていないことが多いからです。まずは口を挟まず「そうか、それはひどいな」などと時々相づちを打ちながら、その子の立場にたって話を聞きます。それからおもむろに、「一番嫌だったのは何?」と聞いてみます。そして「じゃあ、どうやってそれをわかってもらおうか」と尋ねていくのです。多くはそこではっとして気持ちが切り替わり、解決の糸口を探そうと言葉を探し始めます。「怒っているあの子に、そういうふうに言ってもきっと伝わらないよね…」と言いながら一緒に策を練っていきます。ここでは「相手にどうして欲しいか」を引き出さずに、自分の気持ちをわかってもらうための言い方を一緒に見つけていくのがポイントです。気分が落ち着いて、「じゃ、行ってくるよ!」と話をつけに行く背中を見送り、そのやりとりの様子を見届け、解決できたようならgood job ! のサインを送ります。
うまくいくことばかりではありませんが、こうしたことを繰り返していくうちに、子どもたち同士で同じように話を聞いて仲裁をする子が出てきます。自力解決を仲立ちできるようになると、手柄を立てたような気分になりますよね。聞き方を学ぶのも、大切な学びです。子どもたちは学校でこうした教科学習以外のことも学んでいるのです。
東京学芸大学附属世田谷小学校教諭
齋藤豊
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