Vol.216インクルーシブ教育の実現のために
-交流及び共同学習場面からの取組-

2021.4

「いってらっしゃい。次は何の授業?」
「英語です。先生、今日はテストですよ。」

 所属校では、通常の学級の授業に特別支援学級(知的固定学級)在籍の生徒が毎日のように参加しています。交流及び共同学習のための支援員とともに教室に向かう生徒もいれば、生徒のみ、時にはクラスメイトと一緒に向かう生徒もいます。入学した時から、通常の学級に自分の座席があり、通常の学級の班に入り、ホームルームや給食、清掃の時間を過ごします。

 公立学校の特別支援学級設置校の交流及び共同学習の実施率はほぼ100%と言われています。しかし、その実態は、様々で、すべてが充実しているとは言えないでしょう。
 では、なぜ交流及び共同学習が進みにくいのでしょうか。
 児童生徒の発達、情緒の安定といった個人の状態、それを受け入れる教員の理解と技量、交流学級の雰囲気、支援員の制度等の課題は、どの学校においても見られることでしょう。さらに教科の学習で行う場合は、教科の学習で求められる課題設定、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた活動の難しさ、板書量の多さ等が考えられます。

 2021年1月26日に中教審から「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現~(答申)」が出されました。
 ここではまず初めに「個別最適な学び」が挙げられています。これは、「個に応じた指導」つまり、学習者の視点にたって指導の個別化と学習の個性化を図るということです。通常の学級において「個に応じた指導」が取り入れられることで、一人一人が学びやすい環境になっていくことが予想されます。こうした通常の学級での実践が積み重なることで、交流及び共同学習の充実も進んでいくと考えられます。
 また、同答申において、連続性のある多様な学びの場の一層の充実・整備も述べられています。校内においてより一層の連携を図り、学びの場の充実を図っていくことが求められます。
 知的固定学級在籍者数が年々増加していると同時に、学級内での子どものニーズの幅の広がりにもつながっているように感じています。そのような状況の中で、今後は通常の学級の教育課程と特別の教育課程を柔軟に取り入れながら、自立や自己実現を目指すために学習者の意思で柔軟に選択できるカリキュラムがよりくみやすくなるのではないでしょうか。

文京区立第三中学校
下田久美子
※所属は執筆時点です。
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