Vol.085道徳科の特質をふまえた「主体的・対話的で深い学び」とは?③
自己を深く見つめる授業のために

2017.08

 前回(2017年8月vol.84)で述べたように、人間としてよりよく生きようとする人格的特性である道徳性は、児童・生徒が自己の道徳上の課題と素直に向き合い、自己を深く見つめ、自己と対話するところに育ちます。そのためには、道徳の授業は自己を深く見つめ、自己と対話する時間である必要があります。では、自己を深く見つめる道徳授業を具現化するポイントとは何でしょうか。

 元東京都小学校道徳教育研究会会長の後藤忠先生は、よりよい自分づくりをめざして、自己を深く見つめる道徳授業のポイントとして次の5点を挙げています。

 まず、「自由な雰囲気のある学級づくりに努めること」です。一人一人の発言を大事に扱い、個々がきちんと認められているという学級の雰囲気があり、必要な秩序の上に自由は成り立つことを児童・生徒が理解していることが大切です。

 次に、「子どもが本来もつよさを引き出すという指導観に立つこと」です。子どものよさをつぶす可能性があるため、ヒントの与えすぎや手の打ちすぎはいけません。価値の注入、押しつけも厳禁です。子どもが自分でよりよくなろうとする心の動きに対する、的確な援助が大事なのです。

 三番目は、「教えるのではなく心を耕す指導に努めること」です。自分を見つめさせ、知らなかった自分を発見させることが大事で、できる・できない等を問題にするのではなく、自分を深く考えることができれば、それが心の耕しになります。

 四番目は、「脱・即効性であること」です。指導したことを即行動に結びつけようとする妄想にとらわれてはいけません。今までより少しだけ自分を深く見つめることができるようになること。これが道徳性の高まりなのです。

 最後に、「教師もありのままの自分を語る開放性をもつこと」です。教師も人間として発展途上中。教えるという意識ではなく、子どもとともに自分も高まっていくという姿勢が大事です。まず、教師自らが子どもに心を開くようにしましょう。

 以上の5つのことを大事にしながら、道徳の授業を行ってみましょう。そのような授業を通して、児童・生徒は正しい道徳性を養うことになるのです。

東京都昭島市立武蔵野小学校副校長
星野典靖
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