Vol.081AIと教育③
人工知能(AI)社会における「生きる力」とは何か?

2017.07

 東京学芸大学を中心とした共同研究プロジェクトEDUAI(AI×教育プロジェクト)では、2017年5月に「人工知能(AI)社会における『生きる力』とは何か?」というシンポジウムを開催しました。ここでは、その内容について少しご紹介します。

 元木剛日本IBM株式会社理事による基調講演「AI時代の社会と人間の生活」では、AIを人間の知的な活動を拡張する機械・技術として活用する可能性についてお話いただきました。例えば、AIの活用で大量のデータ処理や認知の複雑性を拡張することができます。医療の現場での診断や、注文や予約など顧客サポートの領域でのAIによる膨大なデータの解析です。次に、大学で学生からの質問に対応するチューターとして、AIを活用した事例が紹介されました。知識・情報を個々に合わせて運用し、個別の教育支援が充実していくことが期待されます。さらに、AIは人間の意思決定の支援や専門家が行う判断を担うまでに進化してきました。医療の現場における患者さんに適した診療方法の提案や、料理のレシピの提案などです。また、画像認識技術を用いた視聴覚障がい者の支援システムも急速に開発が進んでおり、AIの技術は今後、生活の様々な場面で活用されていくことになりそうです。

 萩原静厳リクルート次世代教育研究院主席研究員による特別講演「現在のAIの教育への活用」では、パーソナライズドラーニング(個別最適化学習)を目指したAIの活用事例が報告されました。学習のビッグデータの解析により、効率的な学習や、学校では授業のカリキュラムの見直し等に反映することが可能となります。

 パネルディスカッションでは産業界、文部科学省、小学校、教員養成大学といった様々な立場から「2030年代の『生きる力』とは?」について議論されました。AI時代には、社会の中でどう生きていくかという考えを持つこと、教育現場においても児童・生徒がやりたいことをみつけられるような授業づくりや教員養成が必要であるという意見が出ました。また、AIの活用による教員の働き方改革の可能性や、教育界でのビッグデータの蓄積が課題として挙げられました。共同研究プロジェクトEDUAIとしても、今後取り組んでいきたいと考えています。

東京学芸大学講師
萬羽郁子
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