Vol.007教育×ICT=で起こること①「新しい時代に必要となる資質・能力の育成」が求められるようになった理由

pic_01  下村博文文部科学相は11月20日、学校の教育内容を定める「学習指導要領」を改訂するよう中央教育審議会に諮問しました。2020年度にも本格実施される次の学習指導要領の改訂の一番のポイントは「新しい時代に必要となる資質・能力の育成」であり、育成すべき資質・能力を育む観点からの学習評価の充実が強く求められています。それは、「何を教えるか」から「何ができるようになるか」への能力観・学習観の転換であり、そのために「何を学ぶか」、「どのように学ぶか」をも変えていこうというものです。しかし、既にこの議論は世界的な規模で盛んに行われています。具体例には、経済協力開発機構(OECD)が「生徒の学習到達度調査」(PISA)で測定している「キーコンピテンシー」や世界の教育関係者らが立ち上げた国際団体ATC21s(The Assessment and Teaching of 21st-Century Skills)が提唱する「21世紀型スキル」があり、日本だけでなく多くの国の教育に影響を与えています。

 この新しい時代に必要とされる資質・能力の育成が求められるようになった背景には、教え込みによる教師中心の教育からの脱却ともいえる“教育観のパラダイム変換”の存在が大きく関係しています(表1)[1]。

tumblr_inline_nhszqnf2c31skuuny  1960年頃に全盛を誇った行動主義、その後の認知主義の時代においては、絶対的な知識を伝達するための学習指導(学校化された学習)が求められ、評価方法は主に客観的能力測定法であるテストを用い、その結果のみを重視しました。しかし、1980年頃の構成主義の台頭と共に絶対的な知識観が崩壊し、学習活動や課題等が現実的なものでなくてはならないという真正な学習(authentic learning)が求められるようになりました。この真正な学習では、必要な知識を収集・統合し適切な判断を下しながら課題解決を図る力が必要とされますが、この能力はテストだけで評価することは不可能であるため、学習プロセスを通した継続的な学習成果物や学習記録(学習のエビデンス)を重視し、これらを用いて学習者のパフォーマンスを多面的に評価する真正な評価(authentic assessment)が合わせて求められるようになりました。そして、現在の社会構成主義の下では、社会的な営みを通した協働的な学び合いが重んじられています。
 つまり、これからの時代を生きる子どもたちには、知識の伝達だけに偏らず,基礎・基本的な知識・技能を習得するとともに、実社会や実生活の中で、自ら課題を発見し、習得した知識・技能を実際に活用しながら課題解決に向けて主体的かつ協働的に探究・表現していくことができる資質と能力の育成が必要であり、その実現のためには、学ぶことと社会とのつながり(学校と地域,教員と保護者との連携によるコミュニティの構築)がより大切になってきたことがわかります。
[1] 森本康彦、“高等教育におけるeポートフォリオの最前線”、システム制御情報学会誌 システム/制御/情報、Vol.55、No.10、pp.23-29、2011
東京学芸大学情報処理センター准教授
森本康彦
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