異動先の小学校で出逢った保護者会とは….。 前回に引き続き、「魅力的な保護者会を創る」(後編)をお送り致します。
そこでの保護者会は講演会のような感じであった。明らかに会場を出て行く保護者の方々の満足感が感じられた。さあ、次は学級懇談が始まる。今まで以上に緊張が私を襲う。あのような面白い話を聞いた後で、私の学級でつまらない懇談会になってしまっては、保護者はがっかりするだろう。事前に用意していた懇談会で話すメモが、急に色あせて見えた。「事務連絡は最後にコンパクトにまとめて伝え、話題の中心は子どもの話にしよう」。教室に向かう廊下で大きく舵をきった。できる限りリアルに、そしてユーモアを交え、そして、そこから何が言えるのか、何が子どもの良さで何が課題で、そしてこれからどのように学級経営をしていこうと考えているのか、思いを伝えた。おそらく、先輩教師のすばらしい話を聞いた直後で、私自身が高揚もしていたのだろう。保護者から笑いが起こると、どんどんのってくる。次々と子どもたちの顔がエピソードとともに浮かんでくる。あっという間に時間がたっていった。
この保護者会を期に、私の保護者会観が変容した。先輩の保護者会の姿から学んだことは、子どものエピソードを価値づけて伝える、ということだ。個々のことは個人面談等で伝える。学び集団としての子どもの姿を、伝えることが大事だ。ただ、事実だけでなく、子どもの「変容」を伝えると言うことだ。ユーモアたっぷりに価値づけて変容を伝えるためには、日々子どもたちをよく観ていないといけない。さらに言えば、「温かい目」でみないとできない。価値づけるには、勉強が必要だ。保護者の方になるほど、と思わせる話をできるスキルが必要だ。そして話す中身を持つ事が大事だ。本を読んだり映画を見たり、人と話したり、自身も講演を聞きに出向いたり…そのような人としての文化的な営みが、実は教師としての原動力になり保護者会で魅力的な話ができるようになるのではないだろうか。以来、保護者会を迎えるのは、ちょっぴり緊張しながらも「愉しみ」になっていった。
東京学芸大学准教授
鈴木 聡
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