Vol.096「スポーツ」ってなんだろう?②
試行錯誤して創ったバリアブレイクスポーツ

2017.12

 鈴木聡研究室ゼミ生31人を4チームに分け、発達障害の子でも楽しめるバリアブレイクスポーツを開発してきましたが、その開発プロセスについてお話させていただきます。

 まず実際にスポーツを創り始める前に、世界ゆるスポ—ツ協会の方からゆるスポーツの開発プロセスや、実際に創られたスポーツについて教えていただく機会がありました。私たちはみな体育科の学生で、今まで10年以上競技スポーツをしてきており、スポーツといわれると「激しい身体活動量を伴った勝利を目指すもの」というイメージを持っていました。そのため、ゆるスポーツは私たちにとって新鮮で、「これもスポーツなのか...?」と今まで持っていたスポーツ観が揺さぶられました。

 そして、発達障害の有無を問わずみんなが楽しめるスポーツ(=バリアブレイクスポーツ)を創ることになり、発達障害について知れば知るほど、発達障害のある子どもたちが楽しめるようなスポーツとは何か、どのようなことだったらできるのかなど具体的なイメージをなかなか持つことができず、本当に私たちに創ることができるのかと不安になりました。

 そこで、発達障害のある子を具体的に想定し、その子のためにスポーツを創っていくことにしました。順番を待てなかったり、難しいルールが理解できなかったりすることを想定しました。実際に創りはじめると想像以上に、その子たちが楽しめかつ誰でも楽しめるスポーツを創るというのは非常に難しいものでした。「スポーツにストーリー性を持たせればルールの理解ができるのではないか」、「この子の得意なことを活かせれば楽しく行えるのではないか」など私たちの中でたくさん意見やアイディアを出しあいながら、何度も試行を繰り返しました。また、スポーツの中で使用する用具なども、発達障害のある子が使用できるのか、安全性は問題ないのかなど配慮しながら製作し、ついに4つのバリアブレイクスポーツを完成させることができました。

 バリアブレイクスポーツの開発を通して、発達障害への理解が深まり、私たちが今まで持っていた「スポーツ観」という概念がとても広がった気がしています。また、実際に子どもたちに寄り添ってその子が楽しめるものを考えるという視点は、私たちが教員になり、教材について考える際にも必要な視点になるものだと思います。新しいスポーツを考えるという今まで経験してこなかったことに研究室みんなでチャレンジしたことで、私たちの絆も深めることができました。

東京学芸大学大学院生
佐藤悠太郎
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