2014年に東京大学先端科学技術研究センターで始まった異才発掘プロジェクトROCKETも今年で丸5年が過ぎました。人と同じ学び方でなくてもいい。ペースが違ってても、興味関心が偏っててもいい。特異を生かして自分をセルフプロデュースしながら学ぶ場がROCKETです。参加者の1/3が不登校を占めるROCKETのコミュニティは実に多様で、そんな彼らの学びも社会的市民権を獲得し始めたように感じます。2014年には少なかったオルタナティブ教育も、2016年12月教育機会確保法(不登校に関する日本で初めての法律)が成立し、 2017年2月教育機会確保法の施行を受けて需要の拡大が見られます。また2018年12月に日本財団が実施した「不登校傾向にある子どもの実態調査」では、文科省の定める年間30日以上欠席した中学生が3.1%存在するだけでなく、30日未満の欠席者であっても10.2%(推計33万人)が学校になじめていない状況にあることも明らかにしました。この事実が個に応じた教育機会を学校内外に求める流れを加速させています。さらには、経産省が2018年から始めた「未来の教室実証事業」では教育(Education)× テクノロジー(Technology)を組み合わせたEdTechの文脈で、ICT機器やオンライン教材の効果的な活用で個別最適な学びを提供する試みも普及し始め、多様な学びへの対応を国家レベルで整備する潮流が生まれています。海外でも、学習者主体で学びを作り、探求していく教育スタイルへの移行が見られ、特にPBL(Project Based Learning)やSTEAMS(Science Technology Engineering Art Mathematics Sports)教育は盛んに行われています。
異才発掘プロジェクトROCKETでも、未踏の課題が山積する時代に向けて未来の教育を独自に試行しています。ROCKETではAI時代に生き抜く力を「R2D2」と称して掲げています。それはResilience(変化に耐えうる柔軟性)、Reality(リアリティ)、Development(深掘り)、Diversity(多様性)の頭文字を取ったものです。ROCKETのプログラムはActivity Based Learningという活動から学ぶスタイルで展開され、その活動にはR2D2を育成するプログラム設計が施されています。AI時代に求められるのは、予定調和ではないことを面白がって探求していく果敢な学習者なのです。満遍なくこなしていく力とは対極にある偏った力を発揮する多様な人々が協働し合う社会にこそイノベーションの鍵があるかもしれません。ROCKETはそこに価値を見出し、学校からはみ出したユニークな子ども達を集めた学びのコミュニティを醸成しています。