2019年3月2、3日の両日、「日本教育支援協働学会」第1回研究発表大会は、(1)シンポジウム、(2)ラウンドテーブル、(3)実践研究発表の3部構成で行われました。今回は、(2)ラウンドテーブルについて、ご報告いたします。
今大会は、以下の4つのテーマでラウンドテーブルが開かれました。
過去2回(2018年2月、6月)の記念シンポジウムの際にも、ほぼ同様のテーマ立てがなされ活発な議論を交わされましたが、今回の大会ではそれを踏まえ、更に「×(カケル)」ということに重点がおかれました。すなわち、一つの問題にしぼってテーマを設定し熟議を重ねるだけでは解決できないようなものでも、複合的なテーマを設定し多方面からアプローチを試みることで、それぞれの問題の解決をはかれるのではないか、というねらいがあります。こうした取り組みは、今後も引き続き様々な「×(カケル)」が予定そして期待されています。ここでは、その中から、㈿「価値多様化社会における地域学校協働の可能性」についてご紹介いたします。(その他のラウンドテーブルの詳細は、学会HPにてご確認ください。)
まず、岩手県山田町教育次長・箱山智美先生から、「学校統廃合過程における地域文化の再構築とコミュニティースクール」という報告があり、岩手県山田町では、学校統廃合による新学区と地域との関わりを再構築していかなければならない中で、これまでの地域文化をどのように継承していくか、という取り組みが紹介されました。
次に、名桜大学教授・嘉納英明先生から、「多文化化の沖縄社会における学校と地域」という報告があり、多文化化の沖縄での学校と地域の状況についての事例の紹介がありました。沖縄の多文化共生問題は重層的で、米軍(アメリカ人)と日本人の関係以外に、本土出身の人と沖縄出身の人との関係もまた単純な問題ではなく、学校教育や地域連携の問題を複雑にしている要因となっているそうです。
続いて、川崎市立平間小学校長・佐川昌広先生から、「ESD・SDGsの視点とコミュニティ・スクールを通しての学校づくり—平間プライド〜自分・学校・地域の良さを見つけ、未来へつなげよう〜」という報告があり、コミュニティ・スクールを通した学校と地域の連携について紹介がありました。最近では、古くからいる地域住民と新たに転入してきた住民とでも、学校と地域の関わり方に対する考え方が変わってきている、ということです。
最後に、東京学芸大学児童・生徒支援連携センター准教授・田嶌大樹先生から、「知と実践の架橋としての教員養成大学の役割」という報告があり、教育協働の場面でよく指摘される「人材の質・量の不足」、「連携の難しさ」という問題について、ユーリア・エンゲストロームの拡張的学習論を手掛かりに、直接的な連携の他にも、両者を仲介する媒体の重要性について話された。
今回のラウンドテーブルでの報告は、それぞれ全く異質の問題に思われるかもしれませんが、価値多様化社会における多文化共生の問題として捉えれば、すべてに共通するものとして考えることができます。「お隣さんも異文化」とよく言いますが、文化の摩擦は決して国と国の間にだけ生じるものではなく、国内外地域を問わず身近に起こりうる問題であるということなのだと思います。