Vol.126「やってみたい!」がこどもの体力を高める①
こどもの体力と運動習慣の現状

2018.10

 今年度、茨城県内の義務教育学校に視察に行く機会をいただきました。義務教育学校となるにあたって複数の学校の統廃合があり、学区が広がったことで多くのこども達が、バスで通学してくるようになったということでした。

 そこで、一つ質問をしてみました。「こども達の体力の状況に何か変化はありましたか?」。答えは、体力テストの結果が悪くなり、それについても学校教育の一つの課題として取り上げ、体力向上策を行っているということでした。

 「毎日の習慣って本当に大切なんだなあ」と改めて思った瞬間でした。学校に行くために毎日歩くといったごく普通の行動の積み重ねが、自然とこども達の体力を向上させている、逆に言えば、運動することがごく普通の毎日になったら、どんなにかこども達の体力の向上や体の成長に良い効果を与えることだろうと思いました。

 こども達の体力の状況については、スポーツ庁が毎年「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」を行い、その結果を報告書としてまとめています。それによると、平成29年度の小学校5年生及び中学校2年生における体力合計点については、平成20年度の調査開始以降における推移で比較してみると、小学校5年生、中学校2年生ともに男子は横ばい傾向を示し、女子は向上傾向にあるとともに、平成20年度の本調査開始以降で最高値を示しています。ただ、ピークであった昭和60年ごろと比較するとまだ低い傾向にあるとも報告されています。また、運動習慣については、1週間に体育授業以外で運動する時間が少ないこども達の分布が大きくなっており、運動する・しないの二極化傾向が指摘されています(図1)。

図1 1週間の総運動時間の分布(小学校)
<出典>平成29年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果報告書(スポーツ庁)2018年3月

さらに、体育授業以外の運動する時間が0分の児童は、男子が2.9%、女子が4.1%おり、これが中学生になると男子が4.9%、女子が13.6%と増える傾向にあります(図2)。

図2 1週間の総運動時間の内訳

 こういったこども達の体力や運動習慣の現状にある背景として、三間(時間・空間・仲間)の減少が指摘されてきました。最近は、この三間に、運動を一緒に行うといったような大人の「手間」を加えて、四間ともいうそうです。

 見方を変えれば、今の社会の中で、この三間が一番よく揃っている場所は学校であり、そこに、先生方のひと手間を加えることで、こども達の体力づくりに貢献できるということがいえるのではないでしょうか。自然とこども達が運動に取り組める環境づくりや、こども達が「やってみたい!」と思えるような運動(遊び)を提供していく、そのひと手間がこども達の健やかな体をつくっていくことにつながっていくと考えます。

筑波大学准教授 三田部 勇
pdfをダウンロードできます!