Vol.07621世紀型スキルとは③21世紀型スキルの評価とは

2017.05

 21世紀型スキルを学校での客観テスト(ペーパーテストなど)だけで評価することはできません。客観テストは、どれほど知識を身に付けたかを測定することには向いていますが、21世紀型スキルのように、「身に付けた知識をいかに活用し問題を解決していくか」など、学習者の学習プロセスを通したパフォーマンスを評価(アセスメント)することには不向きです(図1)。そこで、注目されているのが「eポートフォリオ」です。eポートフォリオは、学習プロセスを通した“あらゆる学び”に関係する記録を電子的に蓄積したものであり、文書・画像・動画などを組み合わせた学習成果物や、思考プロセスを外化(頭の中の考えを文字などで可視化)した記述データ、対話や観察の記録などのデータ、学習行動やICTの操作履歴等の学習ログなどがそれにあたります(詳しくは、森本(2017)を参照のこと)。

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図1 学習評価の氷山モデル(森本、2012)

 eポートフォリオは、客観テストだけでは見えにくい、思考力等の各種スキルや経験等を見える化できるため、学習者の学習プロセスを通した学習成果や長期的な成長の評価(アセスメント)を可能にします。実際、オーストラリアのクイーンズランド州では、児童生徒の21世紀型スキルに対応する資質・能力を評価するシステムの一つとして、各学校で学年ごとに一定の評価基準で得点化されたポートフォリオが導入されています。また、いくつかの国や州レベルでeポートフォリオを用いた評価を目指した取り組みが始まっています(三宅ほか、2014)。

 日本では、教育の質を保証する取り組みの一環として、多くの大学等の高等教育機関にeポートフォリオが導入され普及してきていますが、初等中等教育においては、まだこれからという段階です。しかし、2020年度に向けて、小・中・高等学校では、一人一台のタブレット端末の整備が始まりつつあります。今後、学校や家庭、地域における情報通信ネットワークの整備とタブレット端末の普及により、場所や時間に関係なく、すべての児童生徒が同様にタブレット端末を用いて、あらゆる学びの記録をeポートフォリオとして日常的に蓄積し活用することで、その学習評価も容易になるでしょう。一方、蓄積されたeポートフォリオは膨大なデータ量になりますが、それらを一挙に分析して、その結果を見える化することで、児童生徒の学びを評価することも可能になっていくでしょう。

【参考文献】
森本康彦 「eポートフォリオの普及」 小川賀代・小村道昭 編著 (2012) 『大学力を高めるeポートフォリオ』東京電機大学出版局: 24-41
三宅なほみ 監訳、 P.グリフィン・B.マクゴー・E.ケア 編集 (2014) 『21世紀型スキル: 学びと評価の新たなかたち』 北大路書房
森本康彦・永田智子・小川賀代・山川修 編著 (2017)『教育分野におけるeポートフォリオ』ミネルヴァ書房

東京学芸大学教授
森本康彦
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