Vol.220キャリア教育推進への第一歩

2021.8

 キャリア教育という文言が、学習指導要領に掲載されたのは、2020年度から小学校で全面実施された学習指導要領(2017告示)が初めてです。学習指導要領(2017告示)におけるキャリア教育の定義は、「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」です。これは、2011年の中教審答申が基になっています。
 藤田(2019)は、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力、すなわち基礎的・汎用的能力(中教審答申(2011)参照)を身に付けさせることがキャリア教育にとっての基盤であるとしています。このことは、学習指導要領解説総則編(2017)においても同じ趣旨の内容が記載されています。では、基礎的・汎用的能力育成に向けて、学校現場では何をすればよいか、その第一歩をご紹介します。
 まず、1)目指す姿の設定を全職員で行うことです。

つまり、児童の実態から身に付けさせたい力の重点化です(場合によっては、児童アンケートや保護者アンケートを行います)。なぜならば、基礎的・汎用的能力は包括的な能力概念であり、相互に関連・依存した関係にあるからです。この際のポイントは、児童にも保護者・地域にも教師にも分かる姿「〇〇できる」という言葉で共有し設定することです。
 次に、2)設定した目指す姿に向けて、どの教科のどの単元で、身に付けさせたい力を効果的に育成できるかを洗い出します。全職員で教科書等を持ち寄り行うと、全体計画を作成することができます。

それを基に各教科等で実践していきます。つまり、児童の実態から目指す姿(身に付けさせたい力)を設定する関係上、どの教科のどの単元を自校のキャリア教育に位置付けるかは各学校で変わってくるということです。
 最後に、3)キャリア教育の要である特別活動、学級活動(3)において、児童の振り返りを丁寧に行うことです。
 以上のことを全職員で共有して、計画、実践、評価、改善とPDCAを回し、毎年度見直し、よりよいものに更新していくことが大切です。

[参考文献]
中央教育審議会(1999)『初等中等教育と高等教育との接続の改善について(答申)』
中央教育審議会(2011)『今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申)』
藤田晃之(2019)『キャリア教育 フォービギナーズ』実業之日本社
文部科学省(2017)『小学校学習指導要領解説総則編』

川崎市立木月小学校
榊原洋介
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