前回は、身近な地域の地理を理解するうえで有効と考えられる地域構造図の種類と特徴を説明させて頂きましたが、地域構造図を描いて地域をとらえるのは特に新しいことではありません。むしろ、現在の中学校社会科地理的分野の日本の諸地域学習において、7地方のとらえ方として用いられている動態地誌は、地域構造(図)的な地域のとらえ方のひとつです。今回は改めて動態地誌の概念を確認するとともに、関東地方の単元を想定し、人口を中核とした地域構造図を描いてみます。
【動態地誌とは何か】
動態地誌とは、地域を構成する様々な要素や生じる事象の中から、他の多くの要素・事象と関わるものを中核として、それとの関係から地域の特徴・構造をとらえる地理学の方法論のひとつで、平成21年告示の学習指導要領から採用されています。図1は、これについて国立教育政策研究所教育課程調査官であった濱野清先生が学会で示されたイメージ図です。

(2013年日本地理学会春季学術大会における濱野清の資料による)
【人口を中核とした関東地方の動態地誌】
日本の諸地域学習の単元では、7地方に対して教科書ごとに中核とする要素・事象が設定され、動態地誌的に記述されていますが、地域の全体像を理解するのは容易ではありません。そこで牛垣(2024)をスリムにする形で、教科書における関東地方の記述を基に、人口を中核とした動態地誌的な地域構造図を図2として描いてみました。

地域構造図に決まった正解はありません。同じ地域でもまとめ方は人によって異なります。図2は大きな枠組みとして都心、郊外、自然条件に区分したため、要素・事象が生じる位置はイメージしやすいかもしれませんが、表現できないこともあります。例えば個性的な商業地やイベント会場などが作り出す魅力的な消費空間は、多くの若者を引きつけ夜間人口も増やしますし、都心では限られた土地に多くの機能や人が集まるためにコンクリートの高層ビルが林立しヒートアイランドをもたらしますが、図2ではこれらの要素間を線で結ぶことができていません。無理に線で結ぶと図が煩雑で分かりづらくなります。図は複雑な事象を分かりやすく伝えるためにあるので、全ての事柄を示すのではなく、内容を精選する必要があります。中学生にとって分かりやすい図にするためには、図2ももっと要素を厳選する必要があるかもしれません。
皆さまなら、どのように動態地誌的な地域構造図を描くでしょうか?これは教科書で学ぶ地誌だけでなく、どのような地域に対しても適応できます。例えば前回の図1は、川崎における工場を中核とした動態地誌的な地域構造図といえます。子どもたちにとって簡単ではありませんが、動態地誌の考え方を取り入れることにより、地域の本質的な理解に近づくことができるでしょう。ぜひ一度試してみてください。