Vol.234言葉による見方・考え方を働かせるとは?

2022.06
小学校国語科の授業において、子どもたちが「言葉による見方・考え方を働かせる」ことができる授業にするためには、どのような考え方や方法があるのでしょうか。 子どもは、ある話題や文章に出会ったときにまずその内容に興味をもち、「面白いな」「不思議だな」などといった感想を抱きます。「大造じいさんとガン」の三場面に心惹かれたり、「海の命」に出てくる太一の生き方に感動したりするという具合です。 内容面の面白さを大切にしながら、なぜ「面白い」と感じたのか(感じさせられたのか)を、言葉の意味や、働き、使い方に注目して捉えたり問い直したりして言葉への自覚を高めることが、言葉による見方・考え方を働かせるということになります。「言葉による見方・考え方を働かせる」とは、話題や文章を「言葉から捉えること、言葉から考えること」と言い換えてみると分かりやすいかもしれません。 例えば、「大造じいさんとガン」の心惹かれる三場面。ここを、言葉の使われ方に着目して読んでみると、一文が短く切られているためにテンポよく読めることが分かります。そういった表現の効果によって物語がより面白くなるのだと気付いたり、他の表現の場合だったらどうかと問い直したりするのです。 以前、「一つの花」の物語で、「お父さんの『一つだけあげよう』に込められた気持ちを想像する」という学習課題に取り組みました。学習が進むうちに、ある子が「一つだけ」という言葉に注目しました。実は、別の場面ではお母さんが言ったりゆみ子が言ったりしていることに気が付いたのです。すると別の子が、この言葉が物語の始まりや課題となっている場面など、重要な場面にも出てくることに気付きます。そこで、この「一つだけ」という言葉は重要な意味を持っているに違いないと考えた子ども達は、三人の言う「一つだけ」の使い方の違いに注目し、お父さんの気持ちに迫ったのです。 これも「言葉による見方・考え方を働かせる」授業の一つと言えるのではないでしょうか。この学習の前に、子どもたちは物語に出てくる重要な言葉について学んでいます。そのような既に身に付けている言葉による見方を更新して用いて、言葉によって考えていったのです。 ここに述べたようなことは、実は以前から国語科の授業では取り組まれてきたことです。「言葉による見方・考え方」として示されたことで、より言葉の学習を行う国語科というイメージが強くなりました。資質・能力を育むための手段として「見方・考え方」を働かせ、それらを更新し、また働かせる。そのような授業が大切なのではないかと考えます。
横須賀市立諏訪小学校
髙坂祐樹