これまでのお金に関する教育の課題
「これください。」「ピッ!」「100円です。」幼児が行うお店屋さんごっこでもよくでてくるほど、「お金」は今の社会になくてはならないものです。
しかしながら日本では「お金」というとなぜか負のイメージが付きまとい、学校教育で取り扱うことへの一部否定的意見などが要因となり、日本の「お金に関する教育」は国際的にみて遅れていると言われています。金融広報中央委員会による金融リテラシー調査(2022年)では、金融教育を受けたと回答している人の割合は7.1%と非常に低くなっているそうです。また、子どもからお年寄りまで幅広い年齢層でお金に関するトラブルが多様化、増加の傾向にあるといいます。特にゲームの課金やインターネットでの買い物などのトラブルが子どもたちには多くみられるようです。一方で、実社会では支払い方法の多様化やキャッシュレス化が進み、インターネットでの売買やゲーム課金などが増加している現状にもかかわらず、例えば小学校家庭科で行われる「お金に関する教育」では、現金払いによる店舗での購入に絞った授業が行われていることもしばしばあり、実社会と学校で行われる「お金に関する教育」に乖離があるという課題も浮かび上がっていると考えられます。
実際学校では、「お金」について教える機会が少なく、何をどう教えるか体系化されていないため、「お金」の専門家ではない学校の先生が「お金」のことを教えるのには限界がありました。そのため、これまで金融・経済を仕事の主軸とする企業や団体が、学校へ出張したり、資料を提供したりする形でこの分野の教育の一端を担ってきました。
今回は、そのような取り組みのうちの一つである東京学芸大学・東京学芸大こども未来研究所・ジブラルタ生命保険株式会社の三者共同研究で開発された授業プログラム「お金ってなに?」の改変に運良く携わることができたので以降で紹介してみたいと思います。
こんな授業プログラムどうですか?-授業開発の背景-
「お金ってなに!?」と聞かれてみなさんは明確に答えられるでしょうか?「お金」は表面的にみればただの紙と金属です。しかしながら、そこに信用が加わると途端に、自分にとって価値のあるものと交換ができるとても便利な道具になります。
小学校の「お金に関する教育」の中心的な学習活動は家庭科の消費者教育です。消費者教育では、よりよい買い物の仕方や消費者としての考え方など、「よりよい消費者になること」が目指される一方で、消費活動の中心的な道具である「お金」そのものについて考える機会はあまりありませんでした。その結果、「お金は大切」「お金は大事に使わなければならない」という考え方だけが一人歩きし、「お金がなぜ大切なのか」ということは置いてきぼりになってしまっていたように思います。
だからこそこの「お金ってなに?」の授業プログラムでは、「お金とは何か?」という当たり前のようで子どもたちが知らない「問い」を中心に授業を構成することで、「お金を大切にすること」を子どもたちが自ら考え、実践できるよう工夫をしてみました。
このあとの記事ではこの「お金ってなに?」の授業プログラムをさらにもう少し詳しく紹介してみたいと思います。