前回述べたように、教育の本質は子どもたちに生きていく上で必要な知識を与え、子どもたちが自分自身の考えをしっかりもち、自信をもって社会の諸問題に取り組むことのできる人間になるように、支えていくものです。
今や先端教育の代名詞ともなっているICTやデジタル教材を使った教育は、教育の本質のどの部分に導入されることで、教育の効果を高めようとしているのでしょうか。まずはこのことについて、問いかけてみることが必要です。時代の流行に流されず、しっかりと教育の本質を考えるためです。
初等教育と中等教育とでは、少しずつICTやデジタル教材を使った教育の役割は異なっていますが、主には次の四つに分けることができるでしょう。
①子どもに学ぶことのおもしろさを感じさせ、興味を喚起して主体的な学びを促すこと。
②子どもが、多様な知識・情報を収集するための環境を作ること。
③個々の子どもたちの多様なニーズに対応した教育を実現すること
(特に特別な支援を必要とする子どもたちへの対応が重要です) 。
④子どもたちの意見交流が活発に行われる環境を作り、対話を通しての思考力・判断力・表現力の育成を補助すること。
現在、子どもに勉強のおもしろさを実感させる様々なデジタル教材が出回っており(①)、インターネットを含む多くの情報源も至る所にあります(②)。たとえば、文字を把握しづらい発達障害(ディスレクシア)に対応したソフトも登場していますし(③)、電子黒板を使った授業内での意見交流も拡がりつつあるようです(④)。むしろデジタル教材が多すぎて、パソコンやタブレット、あるいは電子黒板などのデジタル機器をそろえても、どのデジタル教材を子どもの活動に導入すればよいのか迷うことも多いのではないでしょうか。
しかしまず必要なのは、どれを導入するかではなくて、デジタル教材がなぜ必要なのかをもう少し考えてみることです。上記のように、ICTやデジタル教材の役割を①〜④に分けると、考えやすくなると思います。特にデジタル教材を簡単には導入できない学校の場合、①〜④の実現のために何が必要なのかを、真剣に考える必要があります。
次回はこのことに関連した様々な可能性について、考えてみましょう。