21世紀型スキルで注目すべきところは、「知識や技能の習得」が定義されていないところです。では、これらは軽視されているということでしょうか。いえ、それは違います。これからの時代には「一時的に詰め込んでその後忘れてしまうような知識や技能の習得」ではなく、タイミングよく「必要に応じて活用できる知識や技能を自らが獲得する」ことが重要になります。そこで、21世紀型スキルでは、新しい知識を自ら創り出し、それらを適切に活用していくための資質・能力を4つに大別し説明しています。
まず、最初に挙げられるものは「思考の方法」です。特に、「創造性とイノベーション」をトップに掲げていること(トップが優先順位が高いか否かは別として)は、最大の特徴であり、新しい知識を創造し、新しい活用法を見出していくために“思考する”ことの重要性を主張しています。それには、問題の発見やその解決、その過程で発揮され続ける論理的・批判的な思考力と意思決定、自身で問題の解き方や学び方そのものを振り返り、気づき、改善し続けるためのメタ認知の重要性について指摘しています。
そして、人が思考し、問題を発見、解決していく過程では「働く方法」を工夫する必要がありますが、これからの時代では一人ぼっちで行う仕事は限られており、常に他者と関わりコミュニケーションを取りながら協働的に行っていくことが求められると指摘しています。その際のチームは、むしろ異なった考えや文化をもつ者同士であることが想定され、双方が互恵的に協力し、力を合わせて仕事をしていくことが重要です。つまり、仲良しこよしの関係を越えた異質な集団が、チームワークよく仕事をしていくことが当たり前に求められる時代なのです。
さらに、前述のように思考し、仕事を対話的に協働して行っていく際に必要となる「働くためのツール」が“テクノロジー”であることを指摘しています。逆にいえば、「テクノロジーの力を利用できること」が強く求められているわけです。これからの時代では、単にテクノロジーを使いこなすことが重要なのではなく、道具として当たり前に使いながら仕事を遂行し、成功に至るまで粘り強くやり抜くことが求められます。テクノロジーは単なるツールです。大事なのは、テクノロジーを道具として使い、何をするのか、それによって新しい何かを創り出せるか、が試されていくのです。
最後に、人がテクノロジーを駆使しながら思考し、チームで協働的に仕事を行っていくためには「世界の中で生きる」ということを常に意識し、グローバルな感覚や、生涯学び続けて自身のキャリアを形成していくこと、多文化共生社会の一員として責任を持って仕事をして生きていくことが、基盤的な資質・能力として求められると述べています。