Vol.003教育困難校の今③放課後の可能性

2014.11.
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 プロジェクトにて実施しているABCD分類において、学習習熟度の軸に着目すると、BDゾーンの生徒へのケアが必要ということが見えてきます。このケアに関しては、基本的には個別の学習進度に合った対応が理想的です。しかしながら、このような対応を満たそうとすると、かなりの人的資源が必要となりますが、そのような資源はなかなか望めません。この問題を解決するために、より多くの生徒達が「自学自習」のスタイルを取れるようになるアプローチを考えていきました。

 もともと学習に苦手意識があるので、ただ単にプリントを配布してやってもらうのは難しく、そのプリントの問題を解けるようにするには、学習指導のサポートが必要です。このサポートには、前述のようなハードルがあります。そこで、プロジェクトでは指導動画を作成することで学習のサポートを行うことにしました。不明な点の動画を見るという形で、学習を進めることで、ある意味では「自学自習」の姿勢のようなものが作られていきます。そのようなことを通じて、少しでも「わかる」という実感を生徒にもってもらい、学習することに対して肯定的な態度に向かってきているように感じています。また、その動画を用いた自学自習環境全体をサポートする形で、学生が関わっていきます。

 そのような環境を整えたことによって学習に向かえる生徒ばかりではありません。この「自学自習」の姿勢は、学習意欲が形成されていないと実現するのは難しいものです。そこで、OFFSCHOOL(オフスクール)という環境をつくっています。

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 OFFSCHOOLでは、「遊び」を通して、何かにチャレンジしたり、改善してみたりするというプロセスを通して、学習意欲や好奇心を刺激し、高めていくことを目指した活動です。また、この活動は学校外の活動でもあるので、地域との接点作りという要素も含んでいます。

 「大きなシャボン玉をつくる」といった回では、食器洗い洗剤を水に溶かすころからはじまり、インターネット上での情報を検索、道具作りも行いながら大きなシャボン玉を目指します。
準備が整っただけでは大きなシャボン玉は作れません。風向き、力の加減など、目的を達するために様々な試行錯誤を行ないました。遊びが媒介となり、目的を達成するために長時間試行錯誤を行なうことで、小さな成功体験を重ねながら意欲が形成されることを期待しています。

 また、このような「遊び」では年齢の垣根を超え、地域の方々との交流を誘発します。そういった関わりを通じて地域が子どもを知り、子どもが地域を知る機会となればと考えています。

大学がプロジェクトとして学校支援を行なう場合、授業や運営に関しては、学校の先生が主体となって活動する大前提を外してはなりません。それ以外に、放課後という時間では大学や地域でも活動の主体として動くことが可能です。そのような時間から、学校へのサポートを行える可能性もあるのではないかと考えています。

東京学芸大HATO教育環境支援プロジェクト
柏原 寛
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