うさぎの体より顔への描きこみ、線の多さがあることは、陽平さんがうさぎを描く上で注目している部分であると想像でき、また生活の中でも注目や関心を寄せている部分なのかもしれないと想像させられる。自分の知っていること、人に伝えたいことを、見た通りではなく、陽平さん独特の認識の方法で絵に表現しているようだ。陽平さんが周りのこと、どれだけ認識しているかなど、世界観の広さが絵の内容に深い影響を及ぼしていると思える。
陽平さんが絵を描くシチュエーションには、学校で受けた感情が大きく影響しており、その日によって喜怒哀楽が目まぐるしく変わっている。学校から帰宅するとまっしぐらに机に向かい、動物を題材にして、事物に対する感性、喜怒哀楽といった感情や情緒の様を反映するかのように描き続けている。ただひたすらに、絵を通して自分に向き合っており、この日は、なにがあったのかな?と見て取れる描写が窺える。
唇部分が分厚く、受け口を表現しているのか、笑っているような表情で、とても楽しげな明るい印象を受ける。見ているだけで癒されてしまうこの存在感は、喫茶フロンティアで展示したときに一番人気を誇っていた理由にもなっている。ひれ?それともエラ?の大きさは、身体全体の形から、正面を描いているといえる。畝を拡大描写したことで目立たぬ存在となっているが、忘れずに描いていることから写実的に表現し実物により近いものにしている。陽平さんの多様な一面を知るお母さんは、誰にとっても楽しい絵を描き続ける陽平さんの大切な時間がこれからも続くことを心から願っている事だろう。当たり前ではないことの連続。目には見えない物語が陽平さんの絵から伝わってくる。
発達分野の作業療法士 安河内美樹 / 言語聴覚士・准看護師 大橋恵子