Vol.055造形活動を通して、学ぶことの意味③自律的活動力を育む、造形的なプロジェクト型学習の促進

2016.10
55_pic_01  新しい時代の育成すべき資質・能力として注目されているのが、21世紀型能力です。自立した人格をもち、人間として他者と協働しながら、新しい価値を創造する力のことです。これらの力を育むために、課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習、いわゆる「アクティブ・ラーニング」などを充実することが求められています。美術教育では具体物と関わりながら「質的な判断」をし、多様な見方や考え方で造形的な課題の解決方法をみつける力を育成することを目標としてきました。造形活動を通した、「自律的活動力」の育成が、この教科の目標であるともいえます。しかしこれまでの内容領域の考え方では、「主体的」に学ぶ場面は多くあったものの、「協働的」な学びについては部分的な活動に限られていました。そこで注目されているのが造形的なプロジェクト型学習です。
 これまでも「町づくりプロジェクト」など、造形活動を通した問題解決型のワークショップが、様々な場所で盛んに行われてきました。これは造形活動が本来もつ、「主体的」かつ「協働的」な側面に着目して行われてきたものです。

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 多くの解決策を見つけたり、失敗を乗り越えて新しい方策を見つけたり、また「完成」しても、よりよい表現を思いついた時は勇気をもって変更したりと、具体物と関わるからこそ育まれる力がこの教科の学びにはあります。もちろん美術教育で育まれた力は、他の教科の中でも使われるものと考えています。
 既存の活動内容を大切にしながらも、子ども達が造形活動を通して主体的・協働的に学べる時間、いわば図画工作科の授業に「学びの共同体」が生まれるような授業づくりが求められているのです。子ども達が社会と関わり、様々な問題にであったとき、図画工作科で育まれた力は、きっとそれを乗り越える力になるはずです。そのようになることを願っています。
東京学芸大学准教授
西村徳行
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