授業プログラム「お金ってなに?」の特徴と工夫
「お金は大切だから使い方を考えましょう」と先生に言われてお金の使い方を考えるのではなく、そもそも「お金とは何か?」を考えることで、「お金は大切だ」ということに自ら気づき、主体的にお金を大切にしようする態度を育もうと考えました。そこで考えたこの授業プログラムの大きな特徴は2つです。
①子どもの主体的・対話的で深い学びを意識した授業プログラムづくり
1つ目は「子どもの主体的・対話的で深い学びを意識して授業がつくられていること」で、そのための代表的な3つの工夫点を挙げてみたいと思います。
第1の工夫点は、子どもたちの能動的な学びのために、本来知っているはずの「お金」について疑問を抱かせ、元々もっている知識に揺さぶりをかけている点です。「お金は大切だと言われているがなぜ大切なのか?」「そもそもお金とは何なのか?」という疑問を子どもたちに示すことで、当たり前に知っているはずの「お金」が、知っているようで知らないものになり、興味関心の対象になっていくことを狙っています。
第2の工夫点は、カードゲームを通してお金の機能を実感できるようにしている点です。お金の基本的な機能は「交換機能」「貯蔵機能」「価値尺度機能」の3つで、これは説明すれば言葉として理解することは可能です。しかしながらその機能があることで、どれだけ生活が便利になるものなのかという実感がないため、あくまで言葉上での理解になってしまいます。そこで、お金は自分にとって価値のあるもの(欲しいもの)と好きなタイミングで交換してもらえるといったお金の基本機能の便利さを実際に感じることを狙ったオリジナルのカードゲームを授業内に設定しています。
第3の工夫点は子どもたちが自分ごととして考えやすく、意見交換をしやすいグループワークを設定している点です。グループで行うカードゲームや売買契約の基礎を知るためのクイズ、ECサイト等を使って実際に欲しいものを調べて発表する活動など、子どもたち同士で話し合いをしながら進めていく活動を多く設定しています。またこれは、最終的に学習を日常生活へ活用できるようにすることを狙っています。
②学校の先生が取り入れやすい授業づくり
2つ目は「学校の先生が授業に取り入れやすい形に工夫されていること」で、そのための代表的な工夫点を3つ挙げてみたいと思います。
ここでの第1の工夫点は学習指導要領に準拠している点です。「お金に関する教育」は総合的な学習の時間で扱われることが多々ある分野ですが、それだけでは学校での実施に不都合があることも多いと感じたため、小学校家庭科の「消費生活」の領域で授業プログラム実施が可能なように授業をつくっています。そのため「売買契約の基礎」についての学習など、「消費者教育」の側面をしっかりと授業プログラムに反映しています。
第2の工夫点は、単元全体の構造を意識している点です。単元全体の計画案を作成することで、先生も全体の見通しを持って授業を行うことができるようにしています。単元全体は3部構成にし、「お金とは何か考える(つかむ)」→「お金の使い方の多様化について考える(ひろげる)」→「ものの選び方・買い方について考える(まとめる)」という展開で、「つかむ」段階でお金の機能とお金の大切さに気づき、「ひろげる」段階で大切なお金の使い方には多様な方法があることを知り、「まとめる」段階で自分たちなりのお金の使い方やものの選び方を考えるという一連の流れになるような狙いがあります。
第3の工夫点は、授業プログラムの実施方法を多様化したことです。多くの先生に使っていただくには多様な導入の形に対応できるようにする必要があると考えました。そのため、出張授業からテキストのダウンロード、冊子の配布、一部分の教材のみのダウンロードまで、多様な形での導入を準備しています。
授業プログラム「お金ってなに?」の展開例
ここまで書いてきた通り、授業プログラム「お金ってなに?」は様々な工夫が詰まっています。学習指導案も作成していますが、ここでは紙面の関係上簡単な展開例だけ載せておきたいと思います。
おわりに
お小遣いやお年玉を貰ったことがないという小学生はほとんどいないと思います。また小学校高学年から持つ子どもが増え始めるスマートフォンではアプリやゲームが日常で、課金等が行われることもあります。そんな中、「小学生にお金の話はまだ早い」といってしまうのは少し危ういと思うことはないでしょうか。
目まぐるしく変わる社会状況だからこそ、お金に関する情報もものすごい速さで変わっていきます。お金はあくまで道具です。子どもたちが「お金に関する教育」を受けることで、関連する知識や考える力を身につけ、「お金」や「お金の使い方」について自らが考えることができるようになると、トラブルを防いだり、対処したりすることができるだけでなく、人生をより豊かにしていくことができるのではないでしょうか。
「お金に関する教育」について、ぜひみなさんのご意見もお聞かせください。