Vol.082AIと教育④
教育の未来予想図

2017.07

 東京学芸大学を中心とした共同研究プロジェクトEDUAI(AI×教育プロジェクト)では、2017年5月に「人工知能(AI)社会における「生きる力」とは何か?」というシンポジウムを開催しました。その中で、松田恵示東京学芸大学副学長より、共同研究の成果として、提言「教育の未来予想図 ~Life with AI~ EDUAI」を発表しましたので、ここで紹介をさせていただきます。

 東京学芸大学は、社会の変化を見据えながら、学校現場や家庭・地域と連携して教員養成に携わっています。AI時代の教育という課題に対して、様々な分野の教員が集まり議論を進めてきました。その中で、人間がAIとともに育つ「with AI」という視点で、教育現場でAIを活用していくことを考え、5つの提言にまとめました。

 1つ目の提言は今後の社会に対する教育の役割について、AIという新しい道具を活用することでより「面白く」生きようという考えです。面白いということは能動的な態度であり、この能動的な態度、主体的な能動的態度を育てていかなければなりません。2つ目は、「自己活用力」として、AIにより導き出されたデータを読み解き、自分自身の視点から考え、自分自身を活用していく力をこれからの教育キーワードの一つとして挙げました。3つ目は、自己活用力を考えたときの、教育メソッドを「Just in Time Teaching」としてまとめました。これまでの教育は個人の能力を高めることに注力していましたが、自己活用力は“共育”や他者とのインタラクションによって育まれるものであり、原動力は探求心や好奇心だと考えています。インタラクションは多様に用意される必要があり、教育は「必要なときに、必要なものを、必要なだけ」というありかたに変わっていく必要があるのではないでしょうか。また、4つ目として、その様な教育の中では教師はコーディネーターとしての役割が求められ、AIの活用によって人生を充実させるためには「AIを知る、使う、ともに生きる」力を身につけることが大切であると考えました。最後に、5つ目として、このようなAIと教育の新しい関係性を構築していくために、「AI倫理ガイドライン」の策定を目指しています。

 共同研究プロジェクトEDUAIでは、これらの5つの提言を元に、引き続き様々な企業や行政と連携を図りながら、AI時代を迎えるための準備を進めていきたいと考えています。

東京学芸大学講師
萬羽郁子
pdfをダウンロードできます!