Vol.166水辺に生きる③
「Water SITで水辺を巡る」

 第2回は、回遊魚の一生を紐解く研究をご紹介しました。第3回は、私が携わっている「水辺の学びデザインプロジェクト WaSIT」をご紹介したいと思います。

 東京学芸大学は米国コカ・コーラ財団の助成を受けて、「水辺の学びデザインプロジェクト WaSIT」を立ち上げ、今年度で4年目となります。
 WaSITとは、Water Special Interest Toursの略。SITとは、テーマ性、趣味性の高い目的型ツアーのことで、代表的な観光スポットを巡る一般的なツアーとは異なり、文化鑑賞、動物、健康など個人やグループの関心に基づいて目的地を組んだパッケージ・ツアーを意味します。一連の活動で構成されるこれらのツアーのパッケージは、ひとつの「学習プログラム」として捉えることもできます。

 このプロジェクトでは、「水辺」をテーマにしたオリジナルのWater SITを大学生の視点で企画し、見つけた場所やコースがもつ学びの可能性を探ります。ツアーを経験した後には、独自の教材をデザインしていくことも目標としています。
 また、学生は、学年(学部1年〜修士2年)も、専攻(環境教育、美術、理科、社会、家庭科、地域研究)も様々なため、学生の交流や成長も目的の一つです。

毎年、学生によるツアー企画の前段階として、「水辺を知るプレ・ツアー」を北海道で実施しています。栗山、千歳、小樽、標津等を拠点とし、ダムや水族館の見学、川や湿原、里山歩き、水生生物調査、蕎麦や日本酒といった水に関わりの深い食文化、海や湖、運河を利用したレジャーなど様々な角度から「水」・「水辺」を体験できるようプログラムを組んでいます。
 プレ・ツアーの後は、興味のあるテーマごとにグループを作り、学生によるツアーを企画・体験します。これまでに、生き物に焦点を当てた“ワカサギ氷上釣りツアー”や“クジラツアー”、水が生み出す景観やつながりに着目した“フォトジェニックツアー”や“絶景ツアー”、また流域全体をツアーに組み込んだ“源流探しツアー”、さらに水産資源と人々のつながりをテーマにした“漁業民宿ツアー”など、学生の視点で水辺を捉えたバラエティー豊かなツアーやオリジナルの教材が生み出されています。

 学生は同じ体験や出来事を共有しながらも、視点はそれぞれ違い、発見や発想も学生一人一人で異なります。例えば、川での生物調査の一場面でも、ある学生は魚類に、ある学生は川岸の地層に興味を持ち、またある学生は粘土質の石が異なる色を持つことに気づき、岩盤に絵を描いたり…。

 4年間の活動を通し、自由な活動時間を取り入れることの重要性と、多様な要素や視点を入れることで生まれる興味の広がりとつながりを感じています。
 それぞれにまかれた種が、ときにはその場の瞬発力で、ときには長い時間をかけて醸成され、芽を出し成長します。そこで最も大切なことは、多様な“人”と“才能(特性)”が触媒の機能を果たしている点なのだと、学生に教えてもらい続けている4年間です。

東京学芸大学環境教育研究センター 専門研究員
教育学部非常勤講師
鈴木 享子
 
「水辺の学びデザインプロジェクト WaSIT」事務局
E-mail: watersit@u-gakugei.ac.jp Facebook: http://www.facebook.com/TGU.WaSIT/
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