Vol.222ロールプレイングでなりきる!
~相手の気持ちに立って行動できる力を養う~

2021.9

相手の気持ちを考えるということ
 私はクラス開きの際に必ず「自分を大切にし、相手のことも大切にできる人間になってほしい」と生徒に伝えます。そして「相手のことを大事にするということは、相手の気持ちを考えて行動するということ」だと伝えます。それは生徒が今後、様々な価値観をもつ人と協力し合って社会を作り上げていく中で、自分と同様に相手も尊重し、思いやりのある行動を取ってほしいと考えるからです。そのため、生徒は相手の気持ちになって考えたり、周りの人とどのように折り合いをつけて合意形成をしていくかを学ぶ機会を設けたりするように意識しています。

相手の気持ちになって考える「実践」①
 相手の気持ちになって考える方法として、担当のクラスで「うなずきの効果」を実感してもらいました。具体的にはペアで1分どちらかの生徒が一方的に話をします。聞き手の生徒は一回も頷かない、返事をしない、笑わないという設定です。そして次の1分では話し役の生徒は同様に話しますが、聞き手の生徒は頷き、返事をし、笑顔で聞きます。その後で生徒に感想を聞くと、ほとんどの生徒が2回目の方が話しやすかったと答えます。この活動から、どのような態度で話を聞けば話し手が話しやすいのかを実感することができます。

相手の気持ちになって考える「実践」②
 また、合意形成については、複数人でグループになり、一つの課題に対してそれぞれ異なる意見をもった役割の人が話し合いをする活動を取り入れました。それぞれの立場の役になりきることで、どうすれば全員にとって最も良い答えを導くことができるのかを考えます。役の設定に共通点がなく、初めは「無理だ」と言っていた難問に対しても、生徒は少しずつ譲歩し合って折衷案を見出したり、思いもよらないアイディアを出したりと、協働して考える解決策は様々でした。

ロールプレイングの効果と可能性
 ロールプレイングは、演者がその役を追体験することで、その気持ちに近づくことができます。時間的に余裕があり、役割を交代することができれば、役の違いによる考えの違いにも気が付くことができると考えられます。演者としても観衆として観察する場合でもその場に参加をすることで、相手の気持ちを推し量る力が養われると考えます。 また、ロールプレイングは「役割を演じることをしながら、実は固まっていた、あるいは閉ざしていた自己を揺り動かし、新たな自己を見出す」(八島, 2015)ことも期待できます。
 私はこれらの実践を踏まえた様々なロールプレイングを通して、生徒がより良い人間関係を築いていくことができると考えています。

[参考文献]
八島禎宏(2015)「ロールプレイングの理論と実際」日本学校教育相談学会

広島県立尾道東高等学校
渡部春菜
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