Vol.249思考停止状態からの脱却 ~教員生活20年を過ごして~

2023.9

 高等学校教員を仕事にして20年以上がたちました。勤務校が変わる異動の年に教職大学院への派遣が決まり、新しい環境で学ぶ機会ができました。そこでは、多くの出会いや示唆を得ることができたと実感すると同時に、今までの自分が、いかに思考停止状態で教育活動を行っていたかを思い知ることになりました。

 生きていくために大切なことは、たくさんあると思いますが、私にとっては「アンラーン」という思考が大切なものの一つになりました。日本語では「学習棄却」や「学び直し」と訳されます。今までの自身の考え方や行動をいったん脇に置いて、自身を見つめ直すといった具合です。初めは、なかなか高等学校教員としてのクセが抜けきれず、なんだか息苦しい生活がありました。しかしながら、多くの地域・校種の現職の先生方や学卒院生との交流が、私の考え方や行動に刺激を与え、新たな視点を持つことができるようになりました。また、多くの本との出会いも大きな学びになりました。

 この「アンラーン」の思考を促すものの一つとして「越境学習」があります。これについて石山・伊達(2020)は、「ホームからアウェイへ、アウェイからホームへと「往還することで生まれる違和感、葛藤が、学習効果をもたらす」」ということを言っています。このことを通して、自身の考え方や行動に変化が起き、既存の価値観をアップデートできつつあることを私は今実感しています。「アンラーン」という思考で多くのことにチャレンジすること、新しい世界を見ることが人間的成長を促してくれるのです。

 こういった思考は、教育活動においても大切なものだと感じます。子どもたちに様々なことにチャレンジを勧める場面が教育活動の中では多くあります。このチャレンジを教員自身が体験せずに、子どもたちに勧めて良いのでしょうか。子どもたちにチャレンジすることの意義を伝えることができるでしょうか。

 教員だけでなく「仕事」は、いろいろな立場で多忙さがつきまとうものです。その中で仕事をしていると、何も考えずに「とにかく仕事をこなすだけ」という退屈な状態に陥る危険性があるように思います。そういった思考停止状態にならないためにも、少しでも異なる世界に飛び込むことが必要であり、それがリフレッシュにもなるのかもしれません。忙しい毎日を過ごすからこそ、校外の講演会、研修旅行、ワークショップ、読書などを通してアンラーンすることを勧めたいと思います。

高知県立高知国際高等学校
岡村 幸広
【参考文献】
石山恒貴・伊達洋駆(2022)「越境学習入門」日本能率協会マネジメントセンター p.30
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