授業を行う際、教師はつい学習が苦手な生徒に注意を向けがちです。しかし、昨今は特異な才能のある児童生徒への対応にも注意が向けられるようになってきました。本記事では、国語科の「話すこと・聞くこと」領域の中でも特に「話し合うこと」に焦点を当て、日頃行っている授業の工夫について紹介していきます。
1、何に困っているのか
そもそも、「話すこと・聞くこと」が得意な生徒は、普段どのようなことに困っているのでしょうか。「もっと話したいのに(時間がなくて、友達が聞いてくれなくて、途中で否定や中断をさせられて)話せない」ことや「自分の意見を言うことは好きだけれど、意見を交換し合う場では思うように話せない」こと、「先生や友達の話を聞くことは好き、得意だけれど、自分の意見を求められるとうまく話せない」ことといった困り感が考えられます。では、どのような授業をデザインすればよいのでしょうか。
2、授業の場のデザイン
私が授業を構想する際に意識していることは次の3点です。生徒の得意を生かしつつ困り感を解消すること、「話すこと・聞くこと」を得意としない生徒の困り感を解消すること、生徒の「〜したい」という意欲を潰してしまわないようにすること。例えば、グランドルールの提示や役割カードの活用などです。
グランドルールでは、「①相手の話を最後まで聞こう。②話す時間が平等になるようにしよう。③考えの違いを楽しもう。」といったルールをクラスの実態に合わせて設定しています。初めから「目指す話し合いの姿」を全員で確認することで、教師の介入を少なくしたり、生徒同士で場を調整したりすることができるようになります。「話し過ぎてしまう生徒」は、教師や仲間からの指摘が多いと意欲を減退させてしまうことにもつながるため、それを防ぐというねらいもあります。また、「聞くこと」が得意・苦手な生徒の困り感を同時に解消するため役割カードを用いています。役割カードには、それぞれの役割(司会、記録、発表、調整)の目的、具体的な行動、言葉を記載しており、話し合いの基本にいつでも触れられるようにしています。全員が全ての役割を経験することで、元々得意さのあった生徒は自信や楽しさに、得意さを認識していなかった生徒は、自分の得意を見つけたり苦手を補い合ったりする状態に繋がると考えています。
3、まとめ
授業で手立てを講じるだけではうまく機能しないこともあります。日頃から担任の先生等と連携をとることや、学年で共通の対応をとることで本人と周りが自然と関わり方を学んでいくことができるように思います。本記事で述べた手立てにアレンジを加えるなどして活用して頂けたら幸いです。
参考文献
文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編」2017
さいたま市立大原中学校
宇藤陽香
pdfをダウンロードできます!