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Vol.037理科教育の未来とSTEM教育①理科教育とは一体何を教えることなのか?

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 私は、幼いころから理科が大好きでした。母に部屋を掃除しなさいと言われれば、そもそもホコリってどこから出てくるんだろう?と疑問に思い、家中のホコリの成分と量を調べることに夢中になりました。ある時は、おせんべいで湿度を測ることに興味を持ち、これまた家中にせんべいを置きました。数日後に重さの変化を測定した後、しけたせんべいを食べ比べることになったのは言うまでもありません。またある時は、洗濯用洗剤の計量スプーンでオタマジャクシを毎日毎日捕まえて、とうとう水槽一杯になったところでもうやめなさいと言われる始末。今考えてみれば、極めて迷惑な娘だったと思います。

 そのまま何も考えずに理系に進み、大学では理科教育を専攻しました。当時の私は幼いころのまま、ただの理科大好き女子でしたが、ある時、科学との関わり方はただ「おもしろい」だけではないということに気がつく出来事がありました。それは、北海道大学の科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)の受講です。私はそれまで、科学を伝えるとか教えるといったときの立ち位置は「おもしろい」しか考えていませんでしたが、それを機に、功利性や危険性、社会問題との関わりという科学のさまざまな側面に目を向けるようになりました。それまでよりも少し俯瞰的な視点から科学のことを見ることができるようになったのだと思います。そして、そこで初めて「理科教育とは一体何を教えることなのか?」という問いと向き合うことになりました。

 理科教育とは一体何を教えることなのか?私もそうですが、授業に追われる日常において、そんなことを考える余裕はなかなかありませんよね。しかし、考える余裕がなくても結論が出なくても授業はしなくてはなりません。そんな中で最近出会ったのが「新しい理科教授学習論-子ども一人ひとりの見方・考え方を損なわない理科教授学習法をめざして」という本です。著者のホドソンは「科学の学習」を「科学を学ぶ」「科学について学ぶ」「科学を実践する」という三つに区分し、それぞれの学習の重要性を指摘したうえで、具体的な学習法について議論を展開しています。この三つの区分は私たちが普段の授業で無意識にやっていることを整理するのにとても役に立ちます。日々の授業準備や振り返りの際、この区分を意識することをきっかけに「自分自身の」理科観や理科教育観を「自分で」考えてみるのはいかがでしょうか。ちなみに、私の場合は「科学を実践する」ことを大切にしていることに気がつきました。みなさんは理科をどのように教えていますか?次回はそんな私の具体的な実践をご紹介したいと思います。

NPO法人東京学芸大こども未来研究所専門研究員
木村優里
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