Vol.280先端科学技術時代の授業設計③
探究と創造を往還する教科横断型の教育

2025.07

 前回までは、授業設計(インストラクショナルデザイン)の諸理論について紹介し、授業の設計の指針を紹介しました。しかし、生成系AIの爆発的な進化など、変化の目まぐるしい先端科学技術時代における教育のあり方を考えると、子どもたち自身が探究し、創造する活動が必要となってきます。

(1)STEAM教育とは
 皆さんは、STEAM教育という言葉は聞いたことがありますでしょうか。STEAMは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(エンジニアリング)、Arts(アート・リベラルアーツ)、Mathematics(数学)の頭文字をとったものです。具体的なSTEAM教育の捉え方については、図1に示しています[1]。


 STEAM教育では、科学や技術、数学の知識を土台にしながら、より良い生活や社会になるように、仕組みをデザインし、問題を解決する、エンジニアリングの活動を行います。その中で、自分自身や自分の周りのありたい姿を描くことで、問題を発見、課題を解決します。創造だけではなく、創造と探究の行ったり来たりを繰り返すことが大切です。

(2)プログラミングを用いたSTEAM教育
 私はこれまで、STEAM教育プロジェクトで、約4年半に渡り、「プログラミング未来」の出前授業や教員研修を行ってきました。「プログラミング未来」は、エンジニアリングに重きを置いたSTEAM教材で、小学校の「総合的な学習の時間」で活用できる教材です。実際に私が行った出前授業の例を交えて、STEAM教育の実践を紹介したいと思います。
 導入では、「自動車にはどのような課題があるのだろうか?」と問題提起し、子どもたちが感じていることをまとめる中で、交通事故が多いという意見が出ました。そこで、年齢別の交通死亡事故割合のグラフを提示し、どのような特徴があるのか、意見を出してもらう中で、20歳未満および75歳以上の事故割合が高いという意見が出ました。それに対して、考えられる原因と、解決する方法について議論したところ、運転の操作ミスが多いことが原因なのではないかという意見が出ました。
 そこで、「プログラミング未来」を使って、自動運転する自動車を創ります。そのために、ノートPC上プログラミング環境であるmakecodeで、プログラミングのモーターの回転方法と、「○秒待つ」のブロックをどのように組み合わせれば良いかを、実装していきます。うまくいかなければ、何が原因なのかを考え、コードを組み直し、実装し、というのを繰り返していきます。今回の目標は、スタートから①、②を通り、ゴールに行くことです(図2)。


 自分でプログラムを組み、ゴールに辿り着くことができた児童さんは、次に、「どのような自動車があれば良いだろうか?」ということを考え、自由に自動車を工夫します。「プログラミング未来」には、音を出す機能や、光センサ、赤外線センサもあるので、光や距離に応じて制御を変更するなど、自由に工夫することができます。赤外線センサを使えば、交通事故を防ぐために、障害物があったら自動で止まるような自動車を表現することができます。このように、実際に手元で表現することで、プログラミングを手段として、社会実装を目指すことを体感することができるのです。
 子どもでも、社会実装をすることができることを体験するためには、なかなか座学だけでは難しいと思います。プログラミング未来のように、手元で探究と創造を往還する活動を通して、教科横断的な知識を活用し、問題解決に取り組む授業が、子どもたちのありたい姿を描くことができる授業の姿だと感じています。

島根大学教育学部附属 山陰教員研修センター
先鋭研究部門 特任助教
中村謙斗
【参考文献】
[1] 東京学芸大こども未来研究所(2021)STEAM教育プロジェクトウェブサイト。https://steam.codomode.org/about/(参照日:2025.03.31)
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