「試験が変わらなければ、日本の英語教育は変わらない」という強いコンセプトのもと、英語のテストの在り方が大きく変動してきています。今年度から英語検定2級においてライティングが導入され、続けて来年度には準2級、3級でも課せられるようになります。また、これまで3級から実施されていたスピーキングテストですが、現在では4級・5級においてもパソコン等のICT機器を用いて受験できるようになっています。大学入試ではTEAP(Test of English for Academy Purpose)*1やGTEC(Global Test of English Communication)*2等のスコアを利用できる範囲が毎年拡大し、新センター試験ではそれらの外部試験を利用して、「読む・聞く・話す・書く」の4技能が問われることが本格的に現実化しそうです。
以前勤めていた同僚のネイティブ教員との会話の中で、彼が言っていた言葉が今でも強く私の中に残っています。“There is no correct English any more.”(もう正しい英語なんてないんだよ。)多くの国の人々が英語を話し、それをツールにコミュニケーションが成り立っています。たとえ英語が間違っていても通じてしまうことはありますし、それまでは間違いとされていた英語の表現がむしろマジョリティになるケースさえあります。そのような状況の中で、正しさを気にしすぎるあまり、肝心の中身を伝えようとする気持ちが抑えられてしまっては本末転倒です。今までの日本の英語教育は、あまりに「正しさ」にフォーカスが置かれすぎていたと言えるかもしれません。
もちろん、文法は大切でありますし、それなくしてコミュニケーションは成り立ちません。文法指導で注意すべきことは、「何のために」、「どのように」教えるかを明確にさせてから行うことです。文法は他者を理解し、自分の意見・考えを発信するために必要なのであって、文法問題を解くために必要なのではありません。また、ルールや説明を講義的に聞き、問題演習を通して身につけるべきものではなく、実際に習った文法を書いたり話したり使ってみて、時に間違いに気づいて修正していく中で定着していくものです。
4技能テストがこれからますます普及すれば、それに合わせて教え方が抜本的に変わっていくことでしょう。英語教員にとっては、自分が教わったように教えることが許されない、ある意味厳しい時代ではありますが、子どもたちの未来にとって大変望ましいことであると期待しています。
*1 TEAP…「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能を、大学教育で遭遇する場面などを想定したアカデミックな英語力を測定
*2 GTEC…「聞く」「読む」「話す」「書く」の4技能を、日常生活から学習場面まで幅広い英語運用力を測定
・イラストはhttp://darts-matome.info/wp-content/uploads/2014/03/767e5jrhnu5j.jpgを加工したものです。