Vol.135コンピテンシー・ベースの教育で求められる「評価」②
メタ認知能力

2019.01

 メタ認知とは、認知についての認知、すなわち私たちの行う認知活動を対象化して捉えることをいいます(三宮、2006)。さらに、メタ認知は、図に示す通り、大きくはメタ認知的知識とメタ認知的活動に分けられます(三宮、2008)。

図 三宮(2008)によるメタ認知の分類

 メタ認知的知識とは、メタ認知の中の知識成分をさします。このメタ認知的知識は、さらに「人間の認知特性についての知識」「課題についての知識」「方略についての知識」に分けられます。「人間の認知特性についての知識」は、例えば、「私は物事を批判的に考えることが苦手だ」といった個人内の認知特性についての知識や、「AさんはBさんよりも創造的に物事を考える力が高い」といった個人間の認知特性についての知識、「自分が興味をもって学習したことはそうでない学習状況下に比べ身につきやすい」といった人間一般の認知特性についての知識などをさします。「課題についての知識」は、「くり下がりのある引き算はくり下がりのない引き算よりも間違えやすい」といった知識をさし、「方略についての知識」は、「ある事柄についての理解を深めるためには、誰かにその内容を説明する活動を取り入れることが有効である」といった知識をさします。

 一方、メタ認知的活動は、「メタ認知的モニタリング」と「メタ認知的コントロール」に分類されます。「メタ認知的モニタリング」は、認知状態をモニターすることをさします。例えば、「ここが分からない」といった認知についての気づき、「何となく分かる」といった認知についてのフィーリング(感覚)、「この問題は時間をかければ解けそうだ」といった認知についての予想、「このやり方で良いのだろうか」といった認知の点検などが含まれます。また、「メタ認知的コントロール」は、認知状態をコントロールすることをさします。例えば、「誰かにその内容を説明することができるように理解しよう」といった認知についての目標設定、「分かることから始めよう」といった認知の計画、「このやり方ではダメだから、別のやり方をしてみよう」といった認知の修正などが含まれます。「メタ認知的モニタリング」と「メタ認知的コントロール」は密接に関連しながら機能しており、人間は、自分自身の考えや行動を絶えずオンラインでモニタリングしながら、その時々の状態に応じて、やり方を変化させています。

 近年、児童・生徒のメタ認知能力を育むためには、教師自身が、指導実践を省察する力や、実践に対するメタ認知能力を高めることが期待されています。すなわち、指導実践の有効性を児童・生徒の学びにみることにとどまらす、教師が、自らの実践の中に見出す機会をもつことが重要といえます。

東京学芸大学准教授 梶井芳明
参考・引用文献
三宮真智子(2006)「メタ認知」森敏昭・秋田喜代美(編著)『教育心理学キーワード』pp.104-105、 有斐閣
三宮真智子(編著)(2008)「メタ認知:学習力を支える高次認知機能」北大路書房
梶井芳明(2017)「コンピテンシー・ベースの教育に向けて:メタ認知と自己調整学習から考える」羽野ゆつ子・倉盛美穂子・梶井芳明(編著)『あなたと創る教育心理学:新しい教育課題にどう応えるか』pp.144-155、 ナカニシヤ出版
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