Vol.113次世代教育研究推進機構プロジェクト③
第2回次世代教育研究推進機構シンポジウム(後半)

2018.05

 本号では、第2回東京学芸大学次世代教育研究推進機構(NGE)シンポジウムの後半をご紹介します。

 第4部では、「新しい授業のあり方を提案する」と題して、NGEの部門1のプロジェクトの成果を報告しました。

 はじめに鎌田正裕教授より次世代対応型指導・学習モデルの開発の概要とデータの集め方、指導・学習モデルの作成の考え方を紹介しました。続いて、柄本健太郎講師より「資質・能力をとらえる」と題して、国内外でのコンピテンシーをめぐる議論や、本プロジェクトの具体的な方向性と展開を報告しました。これを受けて、具体的な「授業実践事例」として、社会科では荒井正剛教授・上園悦史教諭(附属竹早中学校)が単元:地理的分野「統合を強めるヨーロッパの国々」(中1)から、保健体育科では鈴木聡准教授・谷百合香教諭(附属世田谷中学校)が単元「ソフトボール(ネット型)」(中1)から、家庭科では藤田智子准教授・菊地英明教諭(附属国際中等教育学校)が題材「洗剤選びの達人になろう」(中2)から、それぞれ実践・分析をもとに育成の手立てを提案しました。次に、西村?行准教授より「教科をこえた資質・能力のつながり」について、例えば「協働する力」には様々な側面・要素(「合意する」「広げる」「高め合う」「役割を果たす」)があることを報告しました。最後に、部門1のまとめとして、細川太輔准教授より「新しい授業づくりへの提案」として、次の4点を提案しています。

① 資質・能力の3要素をバランスよく育てることをねらう。
② 資質・能力の関連を意識して授業づくりをする。
③ 「他者との学び合いの設定」など主体的・対話的で深い学びを引き出す手立てを用いることで、資質・能力を関連させて育成することができる。
④ 手立てを意識的に行うことで、資質・能力の育成をより効果的にすることができる。

 第5部では、「21世紀のコンピテンシーを育成するための指導・学習・評価のあり方とは?」と題して、鎌田教授の司会のもと全体討論を行いました。討論者は、田熊美保氏〔経済協力開発機構(OECD)シニアアナリスト〕、奈須正裕氏〔上智大学教授〕、西岡加名恵氏〔京都大学大学院教授〕、平本正則氏〔横浜市立仲尾台中学校長〕(50音順)でした。討論者より、コンテンツ・ベースからコンピテンシー・ベースへ学習論が移動・拡張する中での課題や、授業実践例とパフォーマンス課題との関連性、現職教員の大量退職・採用後の教育課題、OECDのEDU2030事業との共同研究の意義などの視点から有意義なコメントをいただきました。最後に、松田恵示副学長の閉会挨拶をもって終了しました。また、シンポジウムの参加者から、新学習指導要領の実施を想定した励ましや要望、新たな展開への期待等のご意見・ご感想をいただきました。お礼申し上げます。なお、文中の所属・職名は当時のものです。

東京学芸大学教授(プロジェクト統括教員)
山田一美
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