いよいよ8月5日にリオ五輪が開幕します。それは同時に二度目の東京五輪まで4年を切ることを意味します。私は競技後の選手にインタビュアーが「次の五輪を目指しますか?」と安易に聞くのが、そこに至るまでの選手の思いや努力を軽視しているようで好きではないのですが、このリオ五輪を通して学んだり、考えたりすることで、よりよい「Tokyo2020」はもちろん、それぞれのスポーツライフにつながっていくことを願っています。というわけで様々な切り口でリオ五輪の見方、取り上げ方を考えていきたいと思います。
今回のリオは南米大陸初の五輪になります。ではこれまで南半球で行われたオリンピックはどこでしょう? 歴史をひもとけば、冬季はもちろん、これまでほとんどの開催が北半球で行われていたことが分かります。例外は1956年のメルボルンと2000年のシドニーの二つだけです。世界地図を見ながら、これまでの開催都市の位置関係を知るのは、地理の学習の大きな動機付けになるでしょう。さらにアフリカ大陸に目を移すと、2010年にサッカーW杯が南アフリカで開催されていますが、五輪はまだ行われていません。小学校高学年ぐらいになれば、気候条件だけでなく、経済的な側面も踏まえて、その理由を考えることができるのではないでしょうか。
また「最初の東京五輪は何年?」という質問で日本の歴史と関連させることができます。もちろん「1964年」でいいのですが、「1940年」の幻の東京五輪を挙げることもできます。1945年8月15日に至るまでに、かつての日本は長きにわたって戦争状態にあり、アジア初に内定していた1940年の五輪の開催権を返上せざるをえませんでした。リオ五輪期間中に迎える平和記念日や終戦記念日に際して、世界の国々が「武器」ではなく「スポーツ」を介して、「憎しみ」でなく「親しみ」をもって競い合うことができるこの祭典のありがたみを子どもたちが感じてくれることこそ、何よりの平和教育だと言えるでしょう。
東京学芸大学附属竹早小学校主幹教諭
佐藤洋平
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