コロナ禍によりテレワークが一気に進み、最近新聞でもいくつかの日本企業がジョブ型雇用に転換したという記事を目にするようになりました。ただ日本的経営は「メンバーシップ型」(職務を固定されない、会社に紐づく働き方)で欧米型は「ジョブ型」と、単純に区別されるものでもないようです1。日本でもパート・アルバイトはジョブ型雇用に極めて近く、欧米でも上級ホワイトカラーはメンバーシップ型に近い働き方をしているからです2。さらに、ジョブ型雇用を成果主義と短絡的に置き換えることも誤解のようです。
ジョブ型雇用とは、年齢と処遇を切り離し、職務と処遇を紐づけるものです。適切な処遇を付与するためにも、評価プロセスを明確にしなければなりません。そのため、部下に対する上司の日々の承認とフィードバックが不可欠となります。上司の恣意的な評価にならないよう、「職務記述書」を整備することによって職責を明確化し、成果を見える化させる仕組みです3。日本においては、まず管理職からジョブ型の導入が始まり、新卒一括採用は大きく変えずに入社後10年前後はジョブローテーションをし、その後、職務別の等級制度に移行し、職務別の働き方を辿るキャリアになるとの、専門家の見方があります4。
産業構造が変化する中、キャリア教育はどのような方向性を目指していけばいいのでしょうか。日本の大学でのキャリア教育は、各大学の文脈により独自に発達しており、教養教育として開講されているものや、単に就職活動時のスキル支援として位置づけられているものなど、多岐にわたります。筆者の個人的な意見となりますが、大学での高度専門的な学びが、職業社会に結びつき、その専門的な知識を常にアップデートさせながら将来的な企業間移動を可能にする教育、それが大学におけるキャリア教育なのではないかと考えます。そのためにも、大学での高度な専門性が、どの職業で活躍できる知識を醸成できるのか、どの国家資格等と結びつく深い学びができるのか、大学がそのアカデミック性と職業の関連を明確にした教育をしていくことが必要であると思います。
[引用文献]
1山﨑憲 (2017). 「人事労務管理と人的資源管理におけるinternalとexternal―日本的経営とジョブ型を超えて―」『労務理論学会誌』, 26, 5-20.
2小林祐児 (2020). 「日本的ジョブ型雇用(2)」日経産業新聞(2020年10月16日)p14.
3小林祐児 (2020). 「日本的ジョブ型雇用(6)」日経産業新聞(2020年10月22日)p14.
4小林祐児 (2020). 「日本的ジョブ型雇用(8)」日経産業新聞(2020年10月26日)p11.