前回は,今世界で起こっているSTEM教育の推進について,なぜSTEM教育が必要かについて紹介しました。その中で,技術革新による新しい社会がやってきて,それに対応するための教育として,横断的・総合的に進めていく新しい科学技術教育が必要になってくるとお伝えしました。
それでは,なぜこのような科学技術教育を日本において推進していく必要があるのでしょうか?今回はそこに迫りたいと思います。
平成の終わりに10年に一度の学習指導要領の改訂がありました。
この改訂では,日本の新しい教育の方針を決めるために,事前に文部科学省の方で,改訂のための論点が整理されました(平成27年)。その冒頭で,2030年の社会と子どもたちの未来について,以下のように紹介しています。
1)子供たちの65%は将来,今は存在していない職業に就く
2)今後10年~20年程度で,半数近くの仕事が自動化される可能性が高い
以上のような世界的な予測に加え,日本では2030年に65歳以上の人口が1/3に達し,働く人たちの人口が減少する等と言われています。
すなわち,我々は2020年にオリンピックを迎えて,それが終了した後,このような事態に直面することになります。
以上のような未来を踏まえ,新しい学習指導要領では,生産年齢人口の減少,技術革新等の急速な変化に対応できるように,子供たちが他者と協働して課題を解決していくことや新たな価値につなげていくこと等が求められています。前回もご紹介したように,このような急激な社会の変化に対応するために,AI(人口知能)技術があらゆるところに導入され,人口の減少を機械が補うとともに,我々人間はこれから自分たちの社会を自分たちで創ってくために,新しい価値を生み出す必要があるのです。
そのためには,AI等の機械と共存,役割分担をする社会創りが必要であり,日本でもそのような社会創りが求められるのです。
我々は,今まで入試のために算数や数学,理科等の勉強をしてきた人も多いのではないでしょうか。もちろん,理科が好き,数学が好きという人もいると思いますが,そのような理科系の教育はこれから,AI等の機械と共存,役割分担をする立場として,すべての人々に必要な要素なのです。小学校におけるプログラミング教育も同様です。ただし,これらの教育の延長線上に,技術やエンジニアリングの教育を横断的・総合的に加えて,新しい価値を創り出す教育と機械にしっかりと命令・指令を与える立場としての人間の教育が必要なのです。
このような教育がSTEM教育であり,これからやってくる社会の大きな変化に応えて,未来の日本を創っていくために子どもたちに必要になる教育となるでしょう。