Vol.238答えを一つに絞らない国語科授業の提案
対話を通して自己への認識を深める

 新学習指導要領が全面実施となり、主体的・対話的で深い学びを実現するための協働的な学びの重要性はますます高まっています。国語科の授業の中でも、たとえば登場人物の心情や作品の主題などについて、個人で考え、グループで話し合い、その結果を全体で共有するといった授業展開が多く実施されています。各自がそれぞれの考えをもち、対話を通して読みを深めていく過程は、対話を通して深い学びを実現していく過程と言い換えることができるでしょう。しかし、それは見方を変えると、多様な読みをいわゆる一つの「答え」に集約していく過程と捉えることもできるかもしれません。これまでの授業実践を振り返ると、話し合いを通して多くの生徒がより深い読みを実現できていた一方で、その「答え」が腑に落ちていなかったり、結局先生が求める「答え」を言わないといけないのかと思ってしまったりしている生徒も一定数いたのではないかと感じています。
 そこで考えたのが、作品の解釈自体を最終目標にはしない、「自分と他者の解釈の違いが何によって生じるのかを考える授業」です。授業は、

  1.  個人の読み
  2.  交流
  3.  振り返り

の順番で進めます。まず①では、一つの問いについて、個々に読みを深め各々の解釈をもつようにさせます。答えが一つに絞られやすいものではなく、多様な考えが生まれるような問いが望ましいでしょう。次に②で、それぞれの解釈をその理由とともに述べて交流します。ここで大切なのは、解釈を一つにまとめたり絞ったりしていくのではなく、互いの解釈の「違い」に着目し、「なぜその違いが生じたのかを対話を通して明らかにしていく」ことが目的だという共通認識をしっかりともつことです。解釈が違うことを前提として授業を進めるのですから、「その考えは納得できない」「その根拠は間違っている」などと意見をぶつけ合う必要はありません。むしろ「どうしてそう考えたの?」という質問とそれへの回答という対話を通して、一人ひとりの解釈の理由や思考過程に丁寧に迫っていくことが重要です。中には、「自分の読みは少し浅かったかもしれない」と解釈を修正する生徒もいるでしょう。その場合にも、どうして修正したのかを説明させるようにします。そして、最後に③で振り返りを行います。特に、他の人との比較や質問への回答を思い出しながら、自分の解釈の仕方(何をどのように、また、どうしてそれを根拠としたのか、根拠と意見がどのように結びついていたのか 等)を意識させます。
 このような授業を通して、生徒は自分自身を見つめる「目」をもつことができるようになるのではないでしょうか。

さいたま市立大宮国際中等教育学校
佐々木優介
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