はじめに
「お金は大切!」「お金持ちになりたい!」子どもたちとお金が大切かどうか話をすればかなりの高確率でこんな言葉が聞けるのではないでしょうか。その一方で「お金ってなに?」という問いには子どもたちの頭には「?」がたくさん浮かびます。
「お金」は、そのワードを聞けば子どもたちも思い浮かべることができる広く一般に認知された道具です。これは人間によって発明された道具で、物々交換を行っていた時代と比べると、「好きなものと交換できる(交換機能)」「腐らないので貯めておける(貯蓄機能)」「ものの価値を測れる(尺度機能)」といった機能を持つ「お金」により、人々の生活は格段に便利になりました。
一方、現代では「お金」の便利さが強調され、重要度が増すことに比例して、様々な課題を社会に生じさせる要因の一つにもなっています。そのため「お金」に関係する様々な教育を「いつ」「何を」「どのように」行うかが世界中で議論されています。今回の記事では、そんな「お金に関する教育」について考えてみたいと思います。
「お金に関する教育」のこれまで
日本では1950年代ごろから「消費者教育」や「金融教育」など、様々なアプローチで教育活動が行われてきました。例えば、消費者庁は消費者ポータルサイトで消費者教育を「消費者教育は、自立した消費者の育成を目指して行われるものです。自立した消費者であるためには、被害に遭わないよう努めること(だまされない消費者)、そして合理的意思決定ができ、消費者の権利を実現するよう努めること(自分で考える消費者)が必要です。」と示し、金融広報中央委員会は金融教育を「お金や金融の様々なはたらきを理解し,それを通じて自分の暮らしや社会について深く考え,自分の生き方や価値観を磨きながら,より豊かな生活やよりよい社会づくりに向けて,主体的に行動できる態度を養う教育である。」と定義しています。当たり前ですが、これらの教育活動は領域としては似ているものの定義づけは異なります。しかしこれらの活動は領域的に近接しているため、住み分けが非常に難しくなっています。これは、現状ではまだ日本における「お金に関する教育」は体系化されていないという課題が浮き彫りになっているとも言えるでしょう。
このような課題があるため、ここではこれら「消費者教育」や「金融教育」などのそれぞれの言葉の意味という、個別的・狭義的な捉え方は一旦置いておき、お金に関係する多様な教育的アプローチすべてを包括した広い意味での「お金に関する教育」について考えてみたいと思います。
次の記事ではこれまでの「お金に関する教育」についてもう少し深掘りしていきたいと思います。