Vol.251アンラーニング~教師がファシリテーターとなる

2023.10

 私の大学院での学びは、常にアンラーンし続けています。今までの指導の知識やスキルを一度棄却しながら、新しい知識とスキルを取り入れます。大学院で扱う文献や実践事例、課題研究の検討会や模擬授業から、①具体的な経験をし、②その内容を内省し(振り返り)、③そこから何かの教訓を引き出し、④その教訓を次の状況に応用しながら、知識・スキルのアップデートを行っています。私のアンラーニングの目的は、自分の中の指導法に疑問をもつことです。過信していた指導に、批判的内省(深い振り返り)をすることで、新たな視点を見出します。今までの自分の中の「思考のクセ」からの脱却を目指します。

 私は、授業が好きです。音楽科として、生徒と共に音楽をつくり上げる時間、担任として、テーマに沿ってクラスで考え抜く道徳の時間、クラスの問題について、真剣にみんなで考える時間。1時間の授業が勝負。その授業で子どもたちがどんなことを学ぶのかを考え、試行錯誤しながら授業を組み立てる。教壇に立った時にキラキラ前をみる子どもたちの顔。集中する時と、ふと気持ちがほぐれて、素直な意見を出す時。

 生徒が互いに学び合い、思いを深め、新たな発見をする授業を展開していた時間ももちろん多くありました。しかしうまく授業が進んだ時を思い返すと、こちらの思惑通り、教師側の基軸をつくって生徒がそのレールに乗っていたのではないかという場面もあります。本当の授業とは何かを考え、自分のテリトリーの中での教育から脱しない限り、新しい教育観は見えてきません。今の時代に、今の子どもたちとって、学校に来る意味とは、共に学習する意味とは何かを、もう一度考え直していきたいです。

 自分の指導の課題は、「目的達成」のために、効率的に授業を行っていたことです。一見課題に捉えられないかもしれませんが、それは、目的達成のために、正解を求め、良い方向へと導いてしまっていたことになります。個別学習、協働学習、課題解決学習などの生徒主体の学習はずっと行ってきましたが、もっと自由な過程を経て、試行錯誤しながら、目的や目標に向かって進んでもよいのではないかと考えるようになりました。それには、授業の在り方を根本的に改革する必要があります。今後の課題について次のようなものが挙げられます。

①教師が授業のファシリテーターとなる
②本質的な問いを立てる
③対話型学習を行う
④批評し合う時間をつくる

 以上を総合して、生徒主体の問題解決型学習(PBL)を今後の授業に取り入れます。生徒の主体性・創造性・協同性を育むためには、より社会に生きる精選された学習内容を考えていく必要があります。そのための、活用できる知識・情報を蓄え、指導に活かす実践力・応用力を今後も学んでいきたいと思います。 

【参考文献】
『「学びの責任」は誰にあるのか「責任移行モデル」で授業が変わる』 吉田新一郎 / 『仕事のアンラーニング―働き方を学びほぐす―』松尾睦 

さいたま市立大宮東中学校
とべ あい