Vol.091新「幼稚園教育要領」改訂によって、何が変わり何が変わらないのか③
保育の質の向上のために

2017.10
 幼稚園では、子どもの遊びをなすがままにさせているのではありません。教育課程や指導計画に基づき、時期や子どもの実態に応じて環境(遊具や製作材料等)や、保育者の関わり方を工夫することで、遊びに変化が生まれます。
 
写真 豆まきの枡をつくろう(5歳児2月)
 
 今回の幼稚園教育要領改訂においてポイントの一つとして挙げられている「カリキュラム・マネジメント」とは、教育・保育の内容並びに子育ての支援等に関する全体的な計画に基づき、組織的かつ計画的に幼稚園の教育・保育活動の質の向上を図っていくことを示します。幼稚園では教育要領に示されたねらいと内容を踏まえ、長いスパンで保育の見通しをもつために、教育課程を編成します。次に、集団の実態や地域性等を考慮し、具体的な指導の内容や方法を示した長期指導計画(年単位、期単位、月単位)を作成します。更に、日々の保育を展開していくために、個々の育ちに応じ、週案、日案といった細かい単位の短期指導計画を立てていきます。
 
 遊びを中心とした保育においては、子どもたちが遊ぶ中で、何を経験しているのか、何が育っているのかを保育者が丁寧に見とり、記録する必要があります。「計画→実践→評価・反省→計画の修正→…」のプロセスを重視し、保育の運営を計画的に行うこと、そして、保育を振り返り子どもの姿から環境を再構成することで、子どもの学びが豊かなものとなるでしょう。
 
写真 鬼になって4歳児さんを驚かせよう(5歳児2月)
 
 保育の質の向上のために、保育者一人ひとりが短いスパンで子どもの育ちを見とるだけでなく、小学校、中学校も見据えた長期的なスパンで育ちを評価するものさしをもつことが必要です。加えて、幼稚園として共通した「育てたい子ども像」をもち、複数の教職員で子どもの育ちを見とったり、保護者、第三者の評価に耳を傾け、保育をふり返る場を設けたりするシステムの構築が求められています。
実践女子大学准教授
井口眞美
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