Vol.031OECDと日本がビジョンを描く「次世代教育」③2030年に適した教育について考えたことはありますか?③

2016.02
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 OECDやCCRの枠組みや個々の要素の中身は今後の国際的な議論の中で変化していくと考えられますが、共通点として、(1)単一ではなく複数の資質・能力の育成、(2)情意特性や人間性などの非認知的な資質・能力の育成が挙げられます。特に(2)については、知識やスキルだけでなく、生き方を自ら選び取っていく力こそが、今後の世界を生きていく中で必要と考えられていることが読み取れます。
 では、今の日本の学校教育は、今後の時代の変化に対応可能なのでしょうか。
 日本においては、学習指導要領改定のための論点整理の中でCCRの枠組みの読み替えが行われているように、そもそも複数の資質・能力を総合的に育成しうる枠組みをもっていると考えられます。たとえば「生きる力」は、確かな学力、豊かな人間性、健康・体力という知・徳・体のバランスのとれた資質・能力を目指しているため、豊かな人間性の面において、OECDの挙げる情意特性や、CCRの挙げる人間性をカバーしうると考えられます。また、健康・体力という面では、OECDの挙げるWell-Beingもカバーしうると考えられます。
 現行の日本の学校教育の枠組みが、新しい時代に求められる資質・能力の総合的な育成をカバーしうるという点は、今後の時代の変化に、日本の学校教育が対応できる大きな可能性を示していると考えられます。
 現在、OECDはキー・コンピテンシーの改定を目的に、Education2030事業を行っており、日本は文部科学省・東京学芸大学・東京大学が中心となって、事業に参加しています。このうち、東京学芸大学では2030年に求められる資質・能力の検討や、資質・能力間の相互作用的な育成の姿を検討するために、次世代教育研究推進機構を設置し、OECDと共同研究を行っています。このような取り組みによって、日本の学校教育の成果と課題、そして可能性が世界の先行事例として活用されることで、日本の学校教育が発展していくことが今後期待されます。
東京学芸大学 次世代教育研究推進機構講師
柄本健太郎
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